知り合いに見つからなければ良い
「ああ。積み込まれている荷物の説明が出来ないんじゃ怪しまれるからな」
「なるほどな。移動中に書いておこう」
確かに税関の職員に荷物の説明が出来ないんじゃ話にならないからな。
「これで武具の関係は心配ないな。他に魔道具の類は持ち込んだりはしないのか?」
「例の箱には武器の類しか入れてないな」
「私は魔導書とか結構入れてるよ」
「魔導書か……何冊入ってるか覚えているか?」
「……数えないとわからないね」
ミーシャは武器だけじゃなく魔導書も運び出すつもりのようだ。
「まあ、最悪でも発着場に着いてから詳細を記載すれば良いだけだから何とかなるだろう」
「じゃあ、荷物の心配はしなくてもよさそうだな」
「ああ。やはり、気を付けるべきは発着場までの道のりだな。外に馬車を待たせているが、どれだけ人目に触れずに乗り込めるかだ」
「ん? もう待たせてるのか?」
「予定ではそうなっているな」
オリヴィエは懐中時計を取り出すと時刻を確認する。
「そうか。まあ、この時間帯じゃ人通りも少ないだろ?」
「少ないって言っても、馬車が停まってたら目立たない?」
「注目を集めている状況では乗り込めないな。だが、その時はその時でオリヴィエだけ乗せて出発させれば良いだけの話だろう。その後で合流すれば良い」
「そこまで気にする必要があるか? 確かに我々が今度の火霊祭に審査官として出る事がバレる事は絶対に避けねばならん事だが……しかし、観客として旅行しに行く分には他人に知れ渡ったとしても問題は無いハズだぞ?」
確かに……そこはオリヴィエの言う通りだな。俺達が一緒に行動しているのがバレるのが不味いのはむしろゲイル達ロレット学園の生徒を相手にした場合の話で、外部の人間からしてみたら俺達が一緒にいても特に問題は無いか。
「まあ、極論、俺達の知り合いに見つからなきゃ良いだけの話だしな」
「ああ。もしも見つかると何故我々三人だけが? という部分に疑問を持たれる事になる」
「かと言って他の奴まで一緒に呼ぶと、ホテルに着くまでは誰からも怪しまれずに済むが、ホテルに着いてからがどうしようもなく誤魔化しきれるものでもないな」
まさか俺達三人だけが他のホテルに泊まるって話になって、何の疑問も持たない程バカってわけがないからな。しかし、ホテルまで一緒だと、俺達のホテル内での行動で怪しまれる可能性があまりにも高すぎるわけだ。それを考えたらやはり今のこの状況のように俺達三人だけで行動して、他の知り合いに見つからないように行動するのがベストって事に落ち着くな。




