一緒に運び出す物
「移動方法については理解した。これなら上手く行きそうだな」
「だろう? それに、輸送船なら私達の荷物も怪しまれずに運べるしな」
「そこまで考えていたのか……? しかし、さっき自分で言っていたが、荷物の方は注目されるんだろう? どうやって搔い潜るつもりだ?」
確かに俺達の荷物もまとめて運び出せるのは合理的だが、荷物の方からバレたりしないか?
「どうやっても何も、正面から堂々と素通りさせるだけだ」
「正面から?」
「そうだ。前に説明したとは思うが、人目に触れずに移動するとは言ったが我々も税関を通るからな。覚えているだろう?」
「ああ。旅行だとか大会の観戦に行くって説明すれば良いんだろう?」
俺はオリヴィエからの質問に答えた。幾ら人目に触れないようにと言っても、税関の目まで誤魔化したら密入国になるからな。
「その通りだ。……で、その際に我々の説明とは矛盾するような物も一緒に運ぶ事になるのは理解しているな?」
「まあ、武器の類は持ち込んだら怪しまれるな。護身用……では通らないだろう」
「そういった物を輸送船の貨物と一緒に載せる。他の武器と一緒にな」
「なに……? じゃあ、輸送船で運ぶのって武器なのか……!?」
輸送船を飛ばすんだから何かしらの荷物を積んでいるのだろうとは思っていたが……まさか武器だったとは……まあ、ある意味ではオリヴィエの家らしいと言えばらしいが。
「そうだ。その中に我々の武器を混ぜる」
「いや、混ぜるって……やってる事が密輸じゃねえか……」
「人聞きの悪いことを言うな。輸送する売り物の武器の中に非売品の武器が混ざってるだけだ。まあ、見本ってやつだな」
「見本って……本当にそれで通るのか? 税関にチェックされるんだろう?」
「間違いなくされるな。しかし、商品を売るのが目的と言ってもそれは直近での話だけでは無いからな。当然今後の流通ルートの開拓もあるから……武器の見本を一緒に運ぶ事はそこまで変な話じゃない。まあ、商談のために持ち込んだと言えばそのまま素通りだろう。特に私の持っている武器ならな」
商談か……確かに、火霊祭ではたくさんの才能ある魔術師が一堂に集結して、それをたくさんの人間が観戦するわけだからな。当然、その中にはオリヴィエの家にとって新しい商談相手となるような人物も山ほど集まっている事だろう。それなら武器の見本も一緒に運ぶのも説明がつくな。




