ごまかし方
「なるほどな……しかし、発着場に張り込んでいるような連中もいるんだろ? お前の家の飛空艇が出国するのはバレるんじゃないのか?」
「それは当然把握されるだろうな。しかし、それ自体はそこまで気にするようなものでもない」
「やけに余裕だな?」
オリヴィエは自分のところの飛空艇が出国するのがさも当然の事のような出来事のように語る。
「輸送用の飛空艇で移動するからな。これならば怪しまれない」
「輸送用? なるほど、大会当日はお祭り騒ぎになるらしいからな。確かに物資の輸入なんてあって当たり前だな」
どこの店も大会当日までに品物を並べ終えるのに躍起になっているだろうからな。輸送船の行き来なんていちいち気にしていられないだろう。
「え……? 輸送船で移動するって、積み荷の中にでも隠れるの?」
「いやそんな密入国するってんじゃないんだからさ……」
突然突拍子も無い事を言ってくるミーシャに対し、俺はツッコミを入れる。
「税関でバレたら国際問題だな」
オリヴィエもツッコミを入れるように問題点を挙げる。
「じゃあ、何で輸送船で移動って事になるの? 普通に移動すれば良くない?」
「流石に自家用機で出国すれば目立つだろう? かと言って、一般的な移動方法だと、この時間帯では生徒会の先輩が言っていたように格安の飛空艇しか飛んでいないからな」
「別に良いんじゃないの? 格安でも」
「いや、それだとあまりにも多くの人の目に触れる事になるからな。出来れば避けたいところだ」
確かにあまりにも注目されるってのは不味い状況ではあるからな。しかもオリヴィエが格安の飛空艇に乗ってるとか相当な違和感だろうからな。
「俺達そのものが人の目に触れず、かつ、飛空艇が出国しても違和感が無いのが輸送用ってわけか」
「そういうわけだ。さらに付け加えておくと、税関も新聞記者というのも案外、積み荷の方には注目しても乗組員の方には驚くほど気にもかけないからな」
「……なるほどな……確かに輸送船と言われたら何が積まれているかに興味は湧いても、誰が操縦しているかだとか、誰が乗ってるかなんて興味は持てないな」
「それはそうだろう。輸送船の用途は荷物を運ぶ事だからな。つまり積み荷こそが主役だ。誰だって主役に注目するに決まっている」
まあ、税関の人が積み荷に注目するってのは、当然の話だな。それが仕事なわけだし。輸送船を使う事で積み荷を囮にして俺達への注目を逸らすとは考えたな。




