体力より気力の問題
「とりあえず……今年の大会での目標は五百位以内に入って、そこからどこまで順位を上げられるかって事か」
「そういう事だな。それだけ聞くと、そこまでハードルは高いように思えないかもしれないが、万に一つという事もあるからな。それに何より、準備期間の短さから普通は出場させないのがセオリーとなっている」
風霊祭に専念してから火霊祭では、大会に向けた練習が満足に出来ないというわけか。確かにその点は指摘が入りそうだな。
「そのセオリーから外れた事をしているわけか。……流石に本人の意思だよな?」
「恐らくな。いかに優等生と言えどもセオリーに反した事はやらせたくないハズだからな。それに……ギルドでの活動でも多忙なのだろう? 私から言わせたら、信じ難いハードスケジュールだな」
確かに……毎日学校に通いながら放課後にギルドでの依頼をこなしてるって事になるな。部活は……流石にそんなのまでやってたら日が暮れるか。
「相当な体力が無いと続かないだろうな」
「体力よりもモチベーションだろう。大会までどんなに頑張っても、肝心の大会で体力切れを起こしていては話にならん。気力体力ともにどうやって維持しているのか実に興味深いな」
確かに……よほど明確な目的意識が無ければそんなハードなスケジュールなんて組もうとも思わんからな。今年中に何かやっておきたい事でもあるのか?
「何かしらの目的があるのだろうが……見当もつかないな」
「それなら、これ以上考えても無意味だな。……まだ少し、時間はあるか」
そう言いながらオリヴィエはポケットから懐中時計を取り出して時間を確認した。
「移動か?」
「いや、まだ時間はある。それに、まだ食後のデザートとコーヒーを運んでもらってないしな」
オリヴィエは懐中時計をポケット中に戻すと、呼び鈴を指さした。
「呼び鈴を鳴らしたら運んできてくれるのか」
「まだ押すなよ? ミーシャが食べ終わっていないからな」
俺とオリヴィエはもうすでに運ばれてきた料理を全て食べ終えている。それに対してミーシャはまだパンと最後に運ばれてきた魚料理を食べ終えていなかった。
「そんなに量が多かったか?」
「私達とミーシャでは普段から食べる量が違うだろう」
ミーシャは明らかに料理を食べる手が止まっている。俺達の食べるスピードが速かったとかそういう問題では無さそうだな。




