期待されるハードルの高さ
「まあ、来年再来年があるという考え方は重要だな」
「結果が芳しくなかった後に考える事ではあるがな」
「それはそうだな。……で、火霊祭の対策を真っ当にやるとしたら、資料を読むだけでも一年は欲しいところってのはわかったが……スコロは覚えきると思うか?」
「可能性はゼロでは無いと思うが……そう容易く出来る事では無いな」
一応、オリヴィエが見たと言う資料とは別の物になるから確信を持って言う事は出来ないが、それでもガチで傾向と対策を考えるならそこまでは変わらないハズだ。オリヴィエでさえも短期間での丸暗記は無理と匙を投げる程の情報量……風霊祭の出場者が火霊祭の出場を敬遠するのも頷けるな。
「あいつが火霊祭の情報をいつから集めていたかが重要だな。数年前の段階から計画していたならともかく、風霊祭の後に決めたなら……相当キツイ事になりそうだな。それに……ギルドでの活動も相当ハードらしいからな」
「究極的には出場するかどうかを決めるのはスコロ本人ではあるが……見込みが無ければ学園側が止めるハズだからな。実際に出場してるって事は……見込みはあるという事なのだろうな」
「それだけあいつが優秀って事だな。学園だけじゃなくてギルドでもその認識って事はそれだけぶっ飛んだ成績を叩き出してるって事だよな……? そんなに機会なんてあるか?」
チャペル学園の内部での話で完結しているなら特に気になるところは無いが……ギルドでも同様の認識ってのは少し気になるな。
「まあ、そこは求められてるハードルの問題だな」
「ハードル?」
「ああ。当たり前の話だが、各大会の結果や学業での成績の高さは比例するというか、相関関係にあって欲しいという期待が存在しているわけだ」
まあ、実際のところは得意不得意があるわけだからそういうわけにもいかないだろうが……基本的に一つの分野で優れていたら他の分野もある程度の成績は期待されるだろうな。
「一つの教科だけずば抜けて成績が良いってのはあまり想定されないってわけか」
「そうだ。そしてこれは逆も言える。ある教科が人一倍優秀だからという理由で、他の教科に対して天才的な才能を秘めているとまでは思われないわけだ。つまり、期待されるハードルにはある意味で天井のようなものが無意識に作られる事になる」




