破格の扱い
「なるほどな。あいつくらいの成績ならば、火霊祭の参加者ならざらにいるってわけか。まあ、優勝者に限定したとしても毎年六人出てくるわけだし、百位以内での通過は厳しいだろうな。お前が見送るくらいだしな」
仮に風霊祭で優勝した魔術師が安定して百位以内に入れると考えると、矛盾する部分が一つある。それは十七年経過すれば優勝経験者が百人を超えるという事実だ。つまり連覇などで被りを加味しても二十年も経過すれば風霊祭で優勝した魔術師の中でも百位以内に入る事が出来なくなる計算だ。風霊祭の参加年齢を考えれば四十手前で魔術師としてのピークを過ぎ去っていないとどうしたって数が合わなくなる。つまり……そもそも単純に風霊祭で優勝したからと言っても火霊祭で百位以内に入れるとは限らないって事実が浮き彫りになるわけだな。
「単一の属性しか扱えない私では、あの大会は不向きと言わざるを得ないからな」
「まあ、単純な戦闘能力を問われる審査が毎回あるとも限らないらしいからな。あの大会で優勝した事がある。という事実はあまり参考にはならないか」
俺も向いてないから止めた方が良いとまで先生に言われたからな。
「正直ルール次第ではある。……が、仮に戦闘能力を問われる審査内容だったとして、風霊祭で優勝したからといって百位以内に入れるのが確定かと聞かれるとそうとは限らんからな。ましてや戦闘能力は関係無かった場合も考慮すればさらに確実性は落ちる」
「優勝者でそのレベルの話なら、優勝を逃した奴はもっと見込みは薄いわけか」
「風霊祭に出場した魔術師の中で火霊祭に出る者の割合が少ないのはそのためだな。世間一般の常識から言わせれば、スコロの方が全体から見ればかなり珍しい部類に入る。別の言い方をするならば、むしろあの男は戦闘能力そのものよりも、他の全体的な成績の高さを評価されているという事になるな」
チャペル学園からの評価は強さの方がおまけって認識なのか。そりゃあギルドの人達も応援するわけだわ。
「つまり……大会で出した実績より、学業で出してる成績の方が高く評価されてるって事か? 学生として考えたら破格の扱いじゃないのかそれは?」
「破格も破格だな。そもそも一つの学年の話ではなく、全学年を通して評価した上での推薦のハズだからな。枠が増えたとは言っても、並みの優秀さでは選ばれないぞ」
スコロの奴……チャペル学園での普段の学生生活ではどんだけの優等生なんだ?




