最も運任せな例
「運だけで五百人選出するってのは無理があるだろうからな」
「まあ、それは流石にないな」
「今までで一番運が絡んだのってなんだっけ?」
「ん……? 今までで……?」
ミーシャからの質問に、オリヴィエは少し考えこむ仕草をする。
「確か二択問題でどんどん参加者を落としてく年とかあったよね?」
「二択問題?」
「うん。色んな問題を出して不正解の人を失格にするの。会場を二分するように線を引いて正解だと思う方に集まるって方法で全員参加させてやらせるんだけど……」
まるでクイズ関係のバラエティ番組みたいな企画だな。……まあ、その映像を多くの人が観ていると考えれば理に適った手法ではあるのか。
「聞いている分には、知識や判断力が求められるだろうから完全に運任せって事にはならないんじゃないか? ……まあ、もちろん、運任せで選ぶ奴も多いと思うが」
「いや、それが問題になったのは運とかじゃないハズだぞ? 確か答えを特定の選手に丸投げしていた選手が多数現れたのが原因だったハズだ」
「は? 丸投げって……? ……答えを知ってそうな奴と同じ答えで被せまくったって事か?」
確かにその方法なら、相手が間違えない限りは自分も間違えずに済むが……そんな簡単な攻略法を運営が許すとは思えんがな。
「ああ。参加選手の情報は他の選手も把握していたからな。特に知識が豊富な事で有名な選手に合わせて答える選手が続出した事件だ。……まあ、その事件はあっけなく幕を閉じたが」
「あまり運が絡んでいるようには思えないが……」
「その事件が起こった時は参加者の殆どが残ってたからね。近くにいた人しかその戦法は使えなかったんだよ」
「……ああ、運って配置場所とかそういう意味か……」
「それで最初の数問で間違えた選手が出たからね。その人達は運がなかったね」
まあ、運が無かったと言えば運の無い奴らだったのだろうな。
「……で、幾つかやってる内に他の選手にも伝わったわけか。この選手に乗っかれば良いって」
「そうだね。その人が間違えない限りは絶対にクリア出来るハズだからね」
「しかし、幕は閉じたって言ったよな……? 解決したって事か? まあ、運営がそんなのを放置するわけないか」
「いや、運営はあえて放置したぞ。結果的に正解すれば良いというスタンスを貫いた」
「……要は五百人前後まで絞り込めれば良いだけの話だから過程はどうでも良いって事か? しかし、幕は閉じたって言うからには、そういう手合いは落ちたんだよな? 凡ミスでもしたのか?」
答えを他人に依存するって事は、その依存相手が間違えた場合、軒並み全滅する事になるからな。




