運営の認識
「十分ちょっとで終わるような審査を延々見せられ続けても……観客は困るだろうな」
正直、審査が十分程度で終わる事そのものに関してはそこまで問題では無いのだが……観たい戦いを観終わったらさっさと帰るって観客が多そうなのが問題なわけだ。それだと一日目の終盤にはもう殆んど観客が残っていないなんていう悲惨な光景が広がってしまう可能性がある。これを避けるには観客から注目を集めるような選手を後回しにする事なんだが……それはそれで序盤は観なくても良いって話になりかねないからな。
「三十分は欲しいところだな」
オリヴィエは料理を口に運びながら意見を言う。……一般論から言ってもそれくらいの時間は欲しいとなるだろう。
「だとすると、五百人を十に分けて……五十人で戦わせるって事か」
「そこに審査官も加えれば……六十人くらいにはなるかな?」
「その計算だと、審査官は合計で百人近くいる事になるぞ?」
世界的な大会とはいえ、その一部の競技のために専用の人材を百人確保するってのは……多いのか少ないのか判断がつかないな。
「多いかな? 百人……」
「何とも言えんな……選手の数が五百人と考えると少し集めすぎな気もするが、大会の規模を考えればそれくらい集めてもおかしくは無いな。ルール次第と言ったところだが……審査官の出番は一度きりで、使いまわすつもりは無い事になるだろうな」
「使いまわし……? なるほど、俺達審査官も戦うものだと思ってたから考えもしなかったが、確かに身の安全が確保されているなら幾つかの審査に出られるな」
「逆に言えば、審査官が百人近く用意されていたら、運営は完全に私達審査官を消耗品としてしか認識していないという事になるな」
「それって……全滅するのが前提って事だよね……?」
……まあ、世界で一番優れた魔術師を決めようって趣旨の大会で、選りすぐりの選手が集められた中でバトルするって話だからな。大会運営がどれだけの人材をかき集めて来ようが、選手達も超一流……審査官なんてどれだけ用意してもいるだけの全員が全滅って認識でもおかしくは無いし、また、その認識で集めておかないと何かあった時に対応出来ないからな。
「その全滅というのが、どれ程のものなのかが重要なのだが、流石にほぼ全員が病院送りと言う事はあるまい……」
「少なくとも数時間以内にもう一度同じ事を同じコンディションで……って事は最初から期待してないってレベルで消耗させるつもりかもしれないな」
もっとも、これは実際にホテルに着いて、審査官が俺達以外にどれだけの人数がいるのかによって変わってくる話だがな。しかし、観客からしてみたら派手に戦ってくれた方が盛り上がるだろうから……運営は惜しげも無く投入してきても不思議はないな。




