絶対に避けたい事態
「選手達には自由競争をさせて俺達審査官は連携を組むって可能性は大いにあり得るな……数的有利を作れれば試合をかなりコントロールしやすくなる」
「選手達からしてみたら、いかに我々審査官との戦いを避けるか……あるいは他人に押し付けるかがカギになりそうだな」
「生き残る事が目標なら、審査官と戦う事も撃破する事もメリットが無いからな。……まあ、あえて何らかのメリットを与えて戦闘を激化するように煽る可能性もあるが……」
俺達との戦闘の後、その翌日にも競技が続くと考えたら体力や魔力の温存は最重要視されるハズだ。つまりいかに余計な体力を消耗せずに審査を通過するかというクレバーさも求められるわけだが……審査官の撃破に対して何らかのメリットがあれば、選手達に対して常に審査官に対して闘争か逃走の二者択一を迫る事が出来る。これは今後の展開をよりシビアにする事が期待出来るから、運営としては何らかの手を打っても不思議はないな。
「メリットって簡単に言うけど、わざわざ戦いを選ぶようなメリットなんてあるかな？ 生き残るだけでクリアならどんなメリットがあっても意味なんか無いと思うけど……明日以降の競技に影響が出るようなメリットなら狙う人もいると思うけど、そんなのを用意するかな？」
「確かに……審査官を撃破出来たら翌日の競技で何らかの優遇措置を与えるとしたら撃破を狙う奴は増えるだろうが、それで全体のバランスがちゃんと取れるのかどうかは大分疑問だな。それこそ全員が審査官を撃破してクリアしてしまう可能性だってあるわけだしな」
目の前の競技を盛り上げるために今後の展開で無理が出てくるようなものを設定するのはいくらなんでも行き当たりばったりが過ぎると言うものだ。
「問題と言うなら他にもあるぞ。脱落した選手の順位をどうやって決めるかだ。審査を通過した百名はその後の審査で再度順位を競えば良いが……脱落者はそういうわけにもいかんからな」
「五百位から百一位までの四百人分の順位か……俺達は審査官として招集を受けているわけだが、順位を決定するにあたっての権限が与えられているわけでは無いからな。そんな高度な判断が素人に出来るわけないしな。つまり四百人分の順位を自動的かつそれなり以上の精度で導き出す方法も無ければおかしいわけだ」
一番手っ取り早いのは脱落した順に順位が下になるってルールだ。これなら特に文句も出ないだろう。……が、その場合問題になるのは他のグループとの比較だ。何秒生き残ったかで順位が決まるとすると、選手達同士との戦闘も徹底的に避ける消極策が蔓延しかねない。これは見世物としても翌日以降も予定がある運営としても絶対に避けたい事態だな。
