対処しきれる人数じゃない
「確かに優勝候補を一か所に集めてまとめて通過というのはかなり乱暴な手段だな。変に小細工などしなくても通過してくれると考えれば特に気にする必要も無いとは思うが」
「そこは考慮する必要は無いが……規約上俺達が戦えない相手が存在するってのがネックだな。あまり適当にグループが決められると、戦える審査官がいなくなるって事態に陥りかねない。俺達の負担だって出来る限り均等になるように調整されているだろうからな」
グループのメンバーがあまりにも多国籍になってくると、そもそもその戦闘に参加できる審査官がいなくなるって可能性もあり得る。
「それってそんなに気にする事かな? 完全にいなくなるなんて事にはならないでしょ?」
「普通に考えたらそうだが……審査のルール次第じゃそうも言ってられん。そもそもの話、五百人の中から百人に絞り込むって話だが、俺達審査官だけで対処しきれる人数じゃないからな」
「選手同士でも戦闘が行われるだろう……と、考えているわけだな?」
「選ばれたメンバーから推測するに、俺達も戦闘に参加するだろうが……俺達が選手全員を相手にするなんてのはとてもじゃないが現実的とは言えないな。時間的にも体力的にも足りるとは思えんし、仮に初戦で審査官が脱落した場合、その後の戦闘はどうなるんだって疑問もある」
審査官が何百人も用意されているとは到底思えないしな。仮に百人だったとして、一人頭相手するのは五人……一人目で脱落してしまったら残りの四人は誰がどうやって審査するのか? スケジュールの関係から五連戦か五人を同時に相手する事になるが、連戦の場合は一人目と五人目で難易度が違い過ぎるという疑問。これらを考えると、むしろ基本的には選手同士が潰し合っているところを俺達が乱入するって形になるのが妥当だろう。
「ふむ……規約の問題や審査の効率を求めるなら、それなりの人数の選手を一か所に集めさせて生き残り戦をやらせるのが一番だろうな。我々の目的はより手早く決着まで進めるべく投入されるというわけか」
「ああ。本当に全員を一か所に集めたら俺達の規約に引っ掛かりかねないからな。要は上位二割が残れば良いだけの話だから、例えば選手を五人ずつ集めて戦わせて……最後まで生き残った一人が通過ってルールにするのが一番手っ取り早い」
「問題があるとしたら、それぞれの実力が拮抗して中々勝負が決まらない場合だな?」
「そこで俺達審査官の出番ってわけだ。泥仕合になりそうなところを片っ端から刺激して決着を早めるわけだ。選手からしてみたら俺達を倒したところでメリットなんて一つも無いわけだから、なんとかして俺達審査官を上手く利用して自分が生き残れるように立ち回るわけだな」
……まあ、審査官を倒した奴が通過ってルールもあり得ないわけでは無いが……可能性は低いだろうな。どうしたって『俺が倒した』って言い争いになるだろうし、そこの判断基準が曖昧過ぎる。
「選手五人……審査官を含めた六人以上のバトルロワイアル形式の審査だとすると、規約に記載されてあった条項はかなり重要になるな。一部の選手を贔屓するような行動は公平性に欠けるし、選手からも観客からも反感を買うだろうからな」
まあ、審査官からしてみたら、知り合いの選手に勝ち残って欲しいって思うのが人情だろうからな。ましてや百人から上の順位が今後の人生に大きく関わって来る評価基準になるともなればなおさらだ。




