当日の不安
「上手くいけば何事も無く一日が終わるわけだな」
「何事も無くなんて無理だと思うけどね」
「……いや、わからないだろそれは……」
「いやわかると思うよ。風霊祭で優勝した二人が揃って出場するんだから」
「そりゃあ……他より目立つのは理解しているが、それはどっちかと言えば出る前の話じゃないか? 注目の選手は誰かとか……」
審査官と言う立場とは言え、俺達の出場が会場を騒がせるのは想像がつく。しかし、火霊祭の主役はあくまでも選手達のハズだ。俺とオリヴィエの出場がサプライズになったとしても、盛り上がるのは姿を見せた瞬間から直後辺りになるだろう。その間に質問されるような事はあったとしても、一日の日程が終わった後に質問されるかと言われたら、少し疑問が残る。
「その、本来の出番よりも一足先に呼び出されるかもしれないんだよ?」
「それは……流石に無いだろ? そんな事があるならもと速く向こうから何かあるハズだ。……注目の選手が誰かなんて答えられないぞ俺は?」
選手の事なんて殆ど何も知りませんじゃ放送事故もいいところだ。ホテルに到着した後に選手情報を集められるとしても、確実にボロが出る事になる。
「我々の出番はあくまでも初日だからな……選手達もまだまだ数多く残っている段階だ。残りの人数が絞られてきて、全選手が私達の行動によって進退に関わるような状況にでもなれば注目も集めるだろうが……そうでないならそこまでの注目は浴びないと思うぞ」
「今残っている選手の誰と戦うかわからないって状況ならともかく、規約的に戦えない選手がいるわけだからな」
妙な不正を無くすために、俺達審査官は同じ国からの出場者とは戦わない事になっている。問題なのはそんなものを事前に用意しておく事は不可能だって事だ。なにせ大会で誰が勝ち残るかなんて誰にもわからない事だからな。つまり俺達が誰を審査するかは順番通り審査を突破してきた選手達がどのように集まるかをコントロールして初めて成り立つ理論だ。スケジュール通りに進行していくと仮定すると、五百人に絞り終えてから俺達の出番までの時間はほんのわずかしかない。そんなわずかな時間に審査官と国が被らないように調整するなんて不可能だ。事前に俺達審査官が知り合いの選手とぶつからないようにする組み分けシステムが成り立っているハズだな。
「規約を観客に教えなかったとして、すぐにバレるだろうし、そもそも前年やもっと前の話を考えればある程度は観客も知っているだろうし、同じ国同士でつぶし合うなんて事にはならないだろう」




