舐められたら終わりの世界
「なるほどね。所属する陣営を変えられるのは確かに厳しい事になるね」
「ああ。数の優劣関係が変化しやすいし、おまけに自分の手の内を知ってるわけだ。裏切りなんて到底容認出来るわけがない」
「……で、仲間に裏切られないように仲間意識を強くさせるわけね」
「他にも組織への帰属意識を強く持たせたり、組織の規模が大きくなった場合はボスへの忠誠心を持たせたりするようになる。……まあ、組織への帰属意識は真っ当な組織もやってるが」
帰属意識ってのは要するに所属する欲求ってやつだからな。何らかの社会集団に所属して安心感を得たいって感覚それ自体は万人が持つような変哲の無い欲求だ。わざわざ煽る必要も無く持つようになるだろう。
「ボスへの忠誠心って……思い切った事言うね」
「まあな。実際、最終的にはそこに話は辿り着くだろうからな」
裏社会だとか闇社会だとか、そういう悪党の親玉とか元締めみたいなのが支配者層だって事を考えれば、最後に行きつくのはマフィアとかそういう連中だ。
「そういうとこまで行くと、どこでどんな組織が何やってるかなんて想像もつかないね。一人勝ちって状態では無いんだよね?」
「ああ。完全に統一するのは無理だろうな。恐らくどこかで勢力の拮抗する組織で睨み合いになって、統一じゃなくてお互いに縄張りを作って棲み分けになるのが普通だ」
「ああ、詳しくは知らないけど、そういう話はあるんだってね」
「そこを曖昧にすると勢力図がまた一変する要因になるからな。博打に出るか安定を取るかの二択だ。それで安定を取るなら縄張りの中で徹底的な管理体制を構築するだけだ」
管理がガバガバじゃ安定とは程遠いからな。街とかのレベルでコミュニティが大きければ多少管理が緩くても何とかなるし、逆にグループやサークルレベルでコミュニティが小さければ管理なんてしなくてもお互いの相互扶助でやっていけるハズだ。ところが大きくも無ければ小さくも無い。しかも敵もいるとなれば不安定であるという状況は出来る限り減らしたいところだ。
「自分の縄張りを見張って、新しいグループが出来たら潰すなり吸収するなりでコントロール下に置くわけね」
「じゃないと自分達が破滅するからな。破滅の理由は新しく出来た勢力に追い越されるとか、他の勢力に負ける……表舞台の人達から徹底抗戦にあって潰されるかのどれかになるのがおちだ」
マフィアなんてのは舐められたら終わりの仕事だからな。




