非正規の入手
「それぞれのドラゴンの勢力が拮抗して共倒れしてくれるように人類が介入するわけか。そう上手くいくとも思えんが」
「そこは調査チームの頑張り次第だね」
「頑張り次第って言うが、調査チームなんだろ? ドラゴンを討伐出来る程の実力者が揃ってるのか?」
「ううん。直接倒すんじゃなくて、餌になる魔物や動物の数をコントロールする事でバランスを取る事を狙ってるね」
俺の言葉に、ミーシャは首を横に振る。なるほど、流石の頂点捕食者も餌が無ければ住処を変えるしかないからな……勢力としては衰えざるをえないわけか。
「食糧難に陥らせてパワーダウンを狙うわけか。じゃあ、魔物や動物の討伐数はある程度の上限が設けられたりするのか?」
「そんな厳重なものじゃないけど、推奨したり、控えたりするように呼びかけをかけたりはしてるね。無視して好き放題乱獲しようとする連中もいるけど、一応摘発とかもしてるらしいよ」
餌の数を調整してパワーバランスを保つわけか。しかし、どこの巨大組織が呼びかけるんだか知らないが、そんな事で大人しく従ってくれる程お人よしなんてそうはいないだろう。摘発してるって言い方からして、結構強力な権力が介入しているようだ。そもそも魔物の大量討伐なんて、個人で出来るような事でもないし、確実に組織的な動きはあるだろう。って事は真っ先に思いつくのはギルドへの依頼か……今回の場合で考えるなら、野生動物の乱獲の防止か。国が監視しているとすると、ギルドは隠れながら実行している事になる。発覚したら摘発するとして、摘発するのは別のギルドに依頼するのか?
「遊びや趣味で殺せるほどの金持ちなんてそうはいないよな? って事は利益目的での乱獲って事になるわけだが……そういうのが捜査されたりするのか?」
「そういう事だね。生態系のバランスが崩れたら大変な事になるのは皆知ってるし。フィールドワークで調べたりして国で色々管理しているみたいだよ」
「ドラゴン討伐や害虫駆除に比べたらまだマシか」
「人間相手なら色んなところから話が聞けるしね」
素材の売買が行われてるなら、調べる事は出来るだろうな。
「……この店に流れ着いてたりしないだろうな?」
そう言いながら俺は店の棚に並んでいるモンスターの素材を眺める。
「多分大丈夫だと思うよ。……稀にどこから仕入れて来たかわかんないような素材が並んでたりするけど」
「おいおい、大丈夫かよこの店?」
「……大丈夫でしょ? こういうお店って国に申告する義務があるし」
帳簿を付けて仕入れの量と売り捌いた量を記録して店に並んでいる素材の量を計算するわけか。これで計算が合わなかったら非正規の手段で素材を確保している可能性が高くなるわけだ。




