幅を利かせてる奴
「……まあ、今のところは特定の生物が一気に数を減らしてるって事態にはなってないからとりあえずは安心して良さそうだね」
「特定の生物が独り勝ちって状況にでもならない限りはだいたい天敵も増えて一定のバランスに落ち着くだろうからな」
「ただ、一部の魔物は年々数を減らしてきているみたいだね。原因はドラゴンの勢力図が変化してきてるからだって言われてるけど……」
「なんでドラゴンの勢力図が変わると魔物の数に変化が出るんだ……?」
辺り構わず食い尽くすって考えたらどの生物だって満遍なく数を減らしていく傾向にあると思うが。
「基本的にドラゴンは肉食なんだけど……好みの肉ってのがあるからね。大きく分けて脂を好む種と魔力を好む種がいるね」
「そこら辺の草食動物じゃなくて魔物を好むって事は、魔力を好む種が幅を利かせてるって事か」
「そういう事だね。しかも魔物って人間からも容赦なく討伐されてるから、このまま行くとどれだけ数を減らすか予想も付かないって話だよ」
「……魔物の数が減っても、ドラゴンは魔力の多い獲物を優先的に狙い続けるんだよな? 人間に被害が出るんじゃないのか?」
しかも魔物が減った分、他の生物が大繁殖する可能性も大いにある。さっき話題に出た人間への襲撃の条件を満たしかけているように思えるが。
「可能性はゼロじゃないけど、限りなく低いって言われてるね。根拠としては魔物が減ったとしても草食動物が減ったわけじゃないから害虫の独り勝ち状態にはならないからだね。むしろ動物を襲う魔物が減った事で獣の類が増えてもう片方のドラゴンが増えるだろうって言われてるね」
「お互いに潰し合ってくれるなら問題は起きないかもしれないが……そう上手くいくのか?」
「魔物が減れば魔力を好むドラゴンは食糧難に陥るから、勢力図は拮抗しやすいね。……で、魔力を多く保有する生物を襲う事になるんだけど……その際にドラゴン同士で正面衝突すると言われてるね」
「人間を襲わない保証なんてあるのか? ……単純に人間と遭遇するには距離があり過ぎるって事か?」
「それもあるけど、人間の魔力量って全生物種の中で群を抜いて個人差が大きいって言われてるからね……探す手間と見合ってないだろうってのが一般論だよ」
なるほど、魔力の量が多い奴が山ほど集まってるような状況でもない限りは襲撃を仕掛けてくる事も無いわけだな。




