変化の確認
「……まあ、骨髄を食べるにはそれ専用に進化する必要はありそうだな」
「捕食者としては優秀だとしても、強さで言えばむしろ弱いとも言えるしね」
弱いってのは……進化した理由にもよるな。まあ、強ければ積極的に獲物を狩れば良いだけの話だし、他の肉食生物が見向きもしなくなった死肉を漁って食べるって食性は元々狩りの能力が低かったと考えられるな。それでも死体を分解してくれるって意味では生態系としては重要な立ち位置にいるが。
「まあ、強ければ自分で狩るって考えたら弱いと言えるかもな。それにしても、ドラゴンから警戒を解かれるまでの道のりは相当長いだろ? 良くそれまで全滅しなかったな?」
「そこは相手も馬鹿じゃないからさ、ドラゴンが巣から離れてる頃合いを見て食べるみたいだね」
「それは流石にそうか。わざわざ頂点捕食者の目の前で目立つような真似をするわけもないしな」
普通に考えたら自分が食われる側だってのは本能的に理解していてもおかしくないしな。そりゃあ安全な時に活動するか。
「面白いのはその共生相手が一種類だけとは限らないって部分だね。複数の生物が食べる部分を独自に進化させて棲み分けしていたり、同じ部分を食い合わない種がお互いを無視するように振舞ったりする事があったりするね」
「……それだけ動物の死骸が安定的かつ定期的に供給されるって事だな? しかし、お互いに無関心ってのは観察していればわかる事だが、独自に進化させた……なんてわかるものなのか?」
「結構すぐにわかったみたいだよ? 具体的には近隣に生息する同種の生物と比較してみたり……他にも、共生関係が確認されてからの調査でわずか数十年単位で生態の変化が確認されたりって事象が報告されてるからね」
比較ならわりとすぐにわかりそうだな。しかし、数十年という短さでの進化の確認か……ありえない話ではないが、むしろ数十年近く調査が続けられているって事実の方が驚きだな。
「比較の方は一目瞭然だから良いとして、数十年間調査が続けられたりしてるのか?」
「ずっとではないけど、定期的に調査は行われているね。一部の危険度の高く無いドラゴンはその住処まで完全に特定されて監視という名の観察を続けているからね」
……下手に刺激するよりかはマシだし、研究して今後の何かに役立てた方が良いって考えなのか。まあ、頻繁に人間を襲ってたら論外だから危険なドラゴンは討伐隊が編成されるとは思うが。




