調査の進捗
「ゴーレムか……危険なところはだいたいゴーレムだな」
「まあ、それがゴーレムの使い方だからね。人間じゃ生存出来ないような環境でも活動出来るし、万に一つ魔物に襲われてもコアさえ回収出来れば記録を参照して対策を立てられたり……どちらも生身じゃ出来ない事だよ」
確かに、危険な環境でも問題無く活動出来る上に実際にどんな危険に陥ってもその情報を回収出来ると考えるとかなり有用だな。
「しかし、未知の場所の探索をゴーレムに丸投げするんだろ？ 怖くないか？」
「可能な限りは深海の環境を想定して設計するし、そこで持ち帰った情報を元にさらに設計を変えていくから地道な作業だけど時間さえかければ着実に調査は進んでいくだろうってさ」
「なるほどね。それで潜水艇をプラットフォームにして長期間深海に滞在するのか」
調査の度に地上と深海を行ったり来たりじゃ時間がかかる上に気圧変化でも負担がかかる。より長い期間潜っていた方が何かと便利だろう。
「うん。潜水艇の中で研究しながら同時にゴーレムを改良してもっと深くを探索していくんだって。調査期間は長いと年単位になるみたいだよ」
「年単位かよ……そんな長時間閉鎖空間にいて大丈夫なのか？」
「本番の調査でトラブルが発生したら大変だから事前に何度も密室に閉じ込めてストレステストを繰り返すみたいだね。これで大丈夫だった人が調査員として選抜されるらしいよ」
まるで宇宙ステーションの訓練だな……まあ、似たような物か。
「海の中を調査する人員の話だよな……？ って事は各分野に精通した専門家である事は前提で限られた空間での共同生活が出来て……潜水艇の操縦技術に気圧変化の負荷に耐えられるだけの体力をも求められるわけだ。とんでもない超人の集まりじゃないのか？」
「試験を合格出来る人間なんてほんの一握りだけだね。だから計画自体はずっと昔からあったけど人材が揃えられなくて途方も無い年月がかかって……発表の内容を調べてみるとまだまだ何も解明されてないって感じだよ」
「まだ始まったばかりってわけか」
「今後何か新しいものでも発見してくれれば、色んな分野が活気付くと思うけど……『何も無い』のが深海の特徴だろうってのが専門家の予想だからあまり期待は出来ないかな。……あ、ワイバーンの鱗見っけ」
まあ、栄養素の枯渇した環境だからな……何か発見出来る可能性は限りなく低いだろう。そんな事を話している内に、ミーシャは戸棚の中に雑多に入っている素材の中から何かめぼしい物を発見したようだ。懐からルーペを取り出して手に取った素材を観察し始めた。
