ドラゴンの逸話
「まあ、似たようなものと言っても限度はあると思うがな」
「人間基準で考えても結構神経質な方だね。だけど良い線いってると思うよ」
「他にも心当たりがあるのか?」
「どこまで本当かは知らないけど、一部のドラゴンは本来生きる上では全く必要の無いハズの財宝を集めて守るって習性を見せたりするらしいからね」
「確かに……ドラゴンを退治したら財宝も一緒に見つけたなんて逸話は少なくないよな。流石に創作の類だろ?」
ドラゴン退治と財宝の獲得なんてのは切っても切り離せない定番のお話だ。ドラゴンと言う試練の象徴に対して、財宝という報酬が用意されてあるのは物語のお約束だ。要するに困難に打ち勝った主人公に対してのご褒美のようなものだろう。
「あながち根も葉もない作り話ってわけでもないんだよね。実際に大量の金銀財宝を住処に運んでたドラゴンってのもいるにはいるし」
「じゃあ、その話が元ネタで尾ひれが付いたりしたって事か?」
「可能性としてはありえるね。他のところでも財宝を集めるドラゴンが見つかっていて、そこから似たような逸話が作られたりって事も考えられるし。……ただ、個人的に興味があるのはそのドラゴンがちゃんとその財宝の持つ価値を理解した上で運んでるのかとか、理解しているならどういう気持ちで集めているのかとかそういう部分に興味がわくね」
なるほどその通りだ。価値があるとわかった上で集めているのか、それとも単に綺麗だからという理由で集めているのか、どういう意図を持っているかで随分と印象が変わると言えるだろう。
「カラスみたいに、綺麗だから持って帰ろうって感じの理由の可能性もあるのか?」
「さあね。だけど、価値を理解しているかしていないか……どっちにしても趣味で持ち帰ってるなら、そういう意味でも人間と価値観が似ている部分もあるんだろうね」
「確かに興味を示している時点で美に対する価値観そのものは人間に近いと言えるかもしれないな」
ドラゴンが自分の住処に金銀財宝の類を持ち運ぶってのもありえない話ではないからな。それでもただの偶然って可能性もあるし、その上、本当はドラゴン退治をしてくれたお礼に何か金銭に関わる物を渡していたってだけで、そういう話が変形してドラゴンは財宝を集める習性があるなんて事がまことしやかに囁かれている可能性もある。




