ドラゴンの好み
「うーん……多少は危険を承知の上で行動しないと生き残れないって言うのはわかるけど……それにしたって限度はあるよね」
「その限度をぶち抜くだけのメリットがあるか無いかの二択だな。……実は超が付くほどの偏食家で味が好みってオチだったりしないよな?」
「それって絶対的な頂点捕食者じゃないと成り立たないんじゃないの?」
生存に関する欲求を通り越してある種の娯楽目的で襲い掛かってる可能性もあり得るかと思ったが、そこまでのレベルではないんだったな……一応、食う餌に困らないくらいに強力な個体なら偏食になっても矛盾はしないな。それくらいやってもおかしくないくらいには強い個体しか知られてないわけだしな。……だとすると、そこまで強くない個体も存在するって話になるのか。そういう個体がいる事そのものは否定されたりはしないと思うが……そういう個体が発見されてない理由は何故かと聞かれたら答えられないな。
「頂点捕食者みたいな個体しか確認されていないんだろ? 弱い個体は何故発見されてないんだろうな?」
「発見される前に跡形も無く食われてるか、そうでなくてもほとんどが死ぬんだろうって考えられてるね」
「弱肉強食って言ったってそこまでの精度で淘汰されるものなのか?」
「ドラゴンを積極的に狙うわけだから、同種同士でも争っている可能性はあるね。他にも生息地そのものが過酷で弱いと生き残れないとも考えられるし」
そもそも獲物に出来そうな奴がドラゴンくらしかいないくらいに生物の多様性が枯渇しているような環境か。さっさと新天地へ移住しろとしか言えないが……天性の捕食者も餌が無けりゃ宝の持ち腐れか。
「火山の火口にでも住んでるのか? ってくらいには生物に多様性が無さそうだな」
「それなら生き物がたくさんいる土地まで飛んで行って狩場にすれば良いだけだから、それ以上に過酷な環境だろうね。実際に火山地帯に生息してるドラゴンはそういう生態だし」
「……本当に火口付近を住処にしてるようなドラゴンがいるのか? なんでわざわざそんな場所に……?」
「ドラゴンって結構綺麗好きが多かったりするからね」
「……綺麗好き? 綺麗好きと火山にどんな関係があるんだ?」
綺麗好きだから火山での生活を好むってどういう事だ? いや、その生物が何に対して美を感じるかはそれぞれだとは思うが。自分以外の他に生物がいないとか、無機物に囲まれてるとか、そういう環境を好むって事か?




