危険な行動を取る理由
「ドラゴンを相手に積極的に襲い掛かるとかどんな生態だよ……? もっと安全に狩れる生き物なんてごまんといるだろ?」
どんなに強いとしても、それ以上に黒龍が強ければ……つまり、一方的に捕食出来る関係ならばなるほど、完全に餌と見なして積極的に襲い掛かるってのも納得出来る。しかし、実際にはそんな明確な優劣関係が存在するわけでは無いらしい。
「ほとんど研究が進んでいない分野だから何とも言えないね。だけど、今言ったようにわざわざドラゴンを狙うなんて安全とは程遠い生態だと言わざるを得ないよね。それをするって事は、命の危険と比較しても余りあるだけのメリットがあるって事になるけど……」
「まあ、そうなるな。実際、生き物が危険な行動を取ったり、生存に不利になるような特徴を持ってたりするというのはそこまで変な話ではないしな」
「ああ、クジャクとかね」
ミーシャは俺の言葉に頷いて見せる。確かにクジャクは派手な尾羽を持ち、この羽は飛ぶためには使用しないため生存には不利だ。天敵にも獲物にも見つかりやすいからな。
「あえて生存に不利なハンデを背負う事で自身の優秀さをアピールしているわけだな」
「特徴の方はわかるけど、危険な行動を取るってのはどうかな? 野生の生物はそんなに危ない行動はしないイメージがあるけど……」
「まあな。ここで言う危険ってのは無駄に命の危険がある事をするって意味じゃなくて、無駄に終わる可能性がある行動を取るって意味だ。たとえば木の実がなってるかどうかわからない木に登るとかそういうのだな」
「そりゃあ、木の実が欲しいってなったら虱潰しに登るだろうね」
「ごく当たり前の事のように思いがちだが、木に登るのだってエネルギーを使う。ハズレを引いたらエネルギーは丸まる損だ。つまり木の実を探し出す能力を上げて、木の実がなってる木を確実に見つけた方が効率が良いように思える。……が、実際にはそんな安全策を取りながら長生き出来る程自然環境は甘くないわけだ。木の方だって繁殖するために進化してるわけだしな」
確実にメリットを得られる状況になるまで何もしないんじゃ需要と供給が釣り合わずに餓死する可能性が高いからな。何もせずに死ぬかワンチャン何かに賭けて行動して死ぬかなら、ワンチャンあるだけ後者の方が幾分かマシだ。その理屈で多少の無茶は説明がつくが……失敗したら死ぬ可能性大って行動に見合うだけのメリットは……ちょっとすぐには思いつかないな。




