黒龍の食性
「ある時を境に突然見かけなくなったから恐らく死んだんだろうってのは理解出来るが……それでも若い個体とは言っても黒龍を倒せるだけの強力な生物が他にいる可能性ってのは高そうだな?」
「まあ、他のドラゴンっていうのが有力だね。単純に一対一で負けたって可能性もあるにはあるけど、群れに襲撃を仕掛けて返り討ちに遭ったっていうのが可能性としては一番高いかな」
「群れで生活するのもいるのか……」
当然の事のようにドラゴンの群れが存在するような事を言ってきたな……まあ、角から放たれる魔力でコミュニケーションを取るって言うくらいだし、他の個体と交流があるってのは生態的にありえるか。
「知能の高い生物だからね。むしろ単独で行動するドラゴンの方が少ないくらいだよ。……で、それぞれが役割分担して連携しながら生活しているみたいだね」
「そういう部分は人間に近いみたいだな」
「まあ、ある程度知能の高い生物ならだいたいそういう生態になるんでしょ。ドラゴンからしてみたって自分だけが食物連鎖の頂点でいられるわけではないんだし」
「ドラゴンがどんなに強いって言っても、そもそもドラゴンだけでも複数種類いるわけだしな……そいつら同士での争いがある以上、群れを作らざるを得ないだろうな」
自分だけが唯一無二に最強だって言うなら個体だけでの生存も容易だろうが……当たり前の話だが無性生殖でもしない限りは一匹だけじゃ繁殖は出来ない。つまり寿命が来ればそこで絶滅だ。そして、ダントツで最強ってわけでもない限りは他の種族との生存競争で敗北する可能性だってある。複数種類のドラゴン同士の生存競争ならどこかで衝突がある筈だ。その際に多少戦闘能力に乏しい種でも群れでの数による力があれば多少の戦力差はひっくりかえせるわけだ。そう考えると、ドラゴンと言えども群れを形成して生活するって生態に落ち着くのは想像出来る。
「実際、ドラゴン同士での捕食はそんなに珍しくないよ。他のドラゴンを捕食して莫大な魔力や栄養を補給して強力な個体に成長したりするからね」
「やっぱ良い物食ってると違うのか……」
栄養だけじゃなく戦闘経験も蓄積されて強くなっていくと考えたら、確かに強くなるわな。
「と、言うか……黒龍が群れを作らずにその上で特に人間から危険視されてる理由が積極的にドラゴンを狩るって生態によるところが大きいからね。これは他のドラゴンの研究中に判明した事だけど……」
「他のドラゴンを研究していたら黒龍が他のドラゴンを狩る習性があるって判明したのか? どういう経緯でそんなのがわかったんだ?」
「そういう目撃証言も多くあるんだけど、決め手は黒龍と争った形跡のあるドラゴンが多数発見されているからだね。恐らく捕食された個体に争って逃げ出した個体……返り討ちに成功した個体とかが万遍なく色んな種で発見されてるから多分間違いないよ」
ドラゴン相手でも積極的に狩りの対象にするのか……そりゃ人間基準で考えたら命知らず過ぎて危険視されるわな。




