鑑定書付きは怪しい
「サンプルが足りないってのはどうしようもない問題だな」
「今後どうにかなるかもしれないけど……現状だと確実にダメージを与える事になるから鑑定に出そうとする人はほとんどいないね。逆に鑑定するからには断面を調べない限りは本物かどうかの判断が出来ないから鑑定書付きってやつは逆に怪しいって言えるけどね」
まあ、自分が所有しているお宝にわざわざ傷を付けようなんて真似をしたがる奴はいないだろうな。それで本物だと証明出来るなら百歩譲って良いとしても、もしそれで偽物だと判明したら泣くに泣けないだろうしな。
「確かにな。鑑定書があるって事はそれを鑑定した奴がいるって事になるからな。貴重な物の鑑定を依頼するって事は依頼する調査機関だって世界的に信用されているような大きい規模のところになるわけだから……守秘義務があるからと言われたらそれまでだが、鑑定に関わった人全員が世界的に極めて価値のある発見に対して秘匿をし続ける事が本当に出来るのか? って疑問もあるな」
そう、結局は真贋の判断を下すのは人間である以上は秘密を守り続けるのは至難の業だ。偽物なら秘密にするってのもわかるが、本物だったら世間に公表したいという欲求を抑えるのはそう簡単な話じゃ無いハズだからな。
「そういうどこの誰が鑑定したのかっていう部分も問題になるね。ちゃんとした調査機関の発行した鑑定書じゃないといまいち信用出来ないし」
「そう言えば、確実に本物だと判明している黒龍の鱗が国内にあるんだよな? それも損傷しているのか?」
「ああ、それなら発見された当時から損傷が激しかったから比較的すぐに本物だと判明したよ。詳しく調べてみると他のドラゴンとの戦闘で鱗が剥がれ落ちたみたいだね。……まあ、それはそれでとんでもない大発見になったんだけど」
「黒龍の鱗が戦闘で剥がれ落ちたものだとすると、それだけの激闘を繰り広げた怪物が他にいるって事になるな」
黒龍の強さがどれ程のものなのかは知らないが……サンプルの数が極端に少ないって現状を考えると手が付けられない程強いって事なんだろうな。
「そこなんだよね問題は。黒龍に匹敵するようなドラゴンが他にいるのか……それとも黒龍そのものが専門家が考えている程強くないかのどっちかなんだけど、まあ、前者なんだろうって言われてるね」
「実はそんなに強くないって可能性は無いのか」
「伝承とか考えると弱いって事は無いハズだよ。色んな国の記録に被害状況が記載されているからね」
……まあ、複数の国の記録に残っているなら信用しても良さそうだな。
「複数の国を跨いで被害を出しまくったなら思ったほど強くないって事は無さそうだな」
「うん。他の国にも黒龍の体の一部とかがあるんだけど、その由来が黒龍を討伐したから本物って主張をしている物もあるし」
「……証言だけか」
「一応、当時黒龍からの被害に遭っていたのと、その黒龍が討伐されたのは事実だからすり替えられていない限りは本物だね。因みに偽物の謳い文句の大半はこの時討伐された黒龍が流れ着いたって事になってるね」
他にそれらしい理由が無いなら、確かにそれしか無いだろうな。




