展示されている数
「こうしてみると色々あるんだな」
店に並んでいる商品を手に持って形や手触りを確認する。これは樹木の生皮だな……動物由来の素材と植物由来の素材とで分けられているようだ。
「あんまり目新しい物は並んでないけどね」
「ドラゴンに関する素材なんて滅多に入荷しないんだろ?」
「そりゃあね。個体数が少ない上に討伐するのも困難だから入手方法はだいたいが脱皮だとか他の魔物との戦闘痕……そういう希少な素材は研究用に送られるか金持ちが独占するから市場に出回るなんて事は殆どないね」
「ドラゴンを使役する魔術師もいるだろう? そういうところからは手に入らないのか?」
「ほとんどが研究用に出されるね。死体に至っては完全な状態で保存されるからそれこそ天井知らずの価格で取引されて市場になんて回って来ないよ」
なるほどな。確かに完全な状態で残っている標本をわざわざ小分けにして市場に流す意味がないな。
「研究としてもコレクションとしても途方もない価値があるようだな」
「希少だからね」
「やっぱり種によって価値も変わるのか?」
「そうだね。ドラゴンの中にも色々と分類されているから……ワイバーン系は基本的に高値になるね。他にも系統だけじゃなくて人気のある種っていうのもあって、そういうのは桁違いの値段が付くよ」
恐竜の化石の中でもティラノサウルスが一番人気も値段も高いようなものか。
「って事は、人気のある系統の一部の種はもっと高いのか」
「……いわゆるドラゴン……四本の足と一対の翼を持つドラゴンらしいドラゴンで、黒龍と呼ばれるような奴なら……もしもそんなドラゴンの死体が完全な状態で存在するなら値段なんて付けられないだろうね」
なるほど、いわゆるおとぎ話に出てくるようなドラゴンか。確かにそういう見た目のドラゴンは見た事が無いな。
「それって……実在自体はするのか? 角の一本でも発見されてるとか」
「部分部分なら幾つか発見されてるけど……本当に本物って呼べるものは殆ど無いね。間違いなく本物だとされている物だと、この国の中だと鱗が一枚だけ博物館に展示されてるね。……噂だともう少し発見されてるらしいけど」
実在そのものまでは疑われていないのか。しかし、本物だと確信されている物は国内では一つだけか……そりゃあ値段なんて付けようが無いな。




