時間潰し
「着いたよ」
ミーシャの案内についていくと、魔法生物素材店なる店に到着した。個人経営の古本屋くらいの大きさの建物だ。
「ここが……」
俺は店に入る。内装も古本屋のようだ。違う点があるとしたら本棚の代わりに戸棚が規則正しく並べられているところか。
「いらっしゃい」
俺が店に入ると、店の奥から挨拶してくる声が聞こえてきた。恐らくこの店の店主なのだろう……杖をついた老婆が他の客を相手しながら俺とミーシャを見つめてきていた。
「錬金術に使うような素材はここら辺に置いてあるね」
店に入るなり、ミーシャは入り口付近にある戸棚を指さした。引き戸になっており、その戸には素材の名前と値段が書かれた張り紙が張られていた。……比較的新しい紙だな……定期的に張り替えているのか……それとも品替えをしているのだろうか。
「……個数で値段が決まるのと重さで値段が決まるのがあるな」
一個あたりの値段と一定重量に対しての値段が棚によってまちまちだ。
「大きさが揃ってない素材は重さが基準になってるね」
「なるほどね」
俺は戸棚の一つを開けて中を見る。張り紙には魔物の爪と書かれていた。なるほど、大小様々な爪が敷き詰められている。特に選別される事もなく、適当に詰めたのだろう。
「そこら辺にあるのは安物だね。奥に行くほど高価な物が並んでるよ」
「まあ、盗まれたら大変だからな」
ミーシャは店の奥へと迷う事無く進んでいく。俺も周囲の棚を眺めながらミーシャの後ろをついていく。ミーシャの言う通り、奥の方へ行くほど商品の値段は上がっていった。棚に張られている紙も、魔物の爪だとかの抽象的な名称ではなく、具体的な生物名のどこの部位なのかが値段と一緒に書かれていた。
「おばちゃん。何か良いの入ってる?」
「うん? 珍しい木材なら仕入れたけどそれ以外は手に入ってないねぇ」
「ふーん……」
老婆の指さす方向を見るとなるほど、複数の品種の切り株が何個か並んでいる。……と、言うか、普通に会話してるが顔見知りなのか。顔を覚えられるレベルでこの店を訪れてるのか?




