待ち合わせ場所の決定
「……私の事、教えてなかったの?」
部屋から出て周囲に人がいない事を確認すると、ミーシャが俺の事を見上げながら話かける。
「規約的に教えるべきじゃなさそうだったんでな。それに、万に一つ俺とオリヴィエの事がバレてもお前にまで被害が出るのだけは避けられるからな」
「ちゃんと教えといた方が良かったと思うけどね」
「……かもしれないな」
まさかカルラにミーシャも審査官に選ばれた事を伝えなかった事がここまで面倒な事に発展するとは思っていなかった。……もっとも、明後日になってしまえばそれもすべてが終わるからこの苦労もあと少しだけだ。こうなってくると気がかりなのは俺とオリヴィエ、そしてミーシャが今夜以降この学園を留守にするのが発覚する事だが……俺はそもそも今夜出発する旨を周囲に話しているからな……特に問題は無いだろう。オリヴィエの方も観戦しに行く事そのものは公言しているようなものだし、今夜学園を出てもそこまで怪しまれないか。問題は会場に行くつもりが無いってスタンスのミーシャだな。
「まあ良いや。じゃあ、私は寮へ戻って準備するから、そっちも準備が終わったら校門で待っててね」
「一緒に学園を出るのか? 他の奴に見つかって合流でもされたら面倒な事になるんじゃないか?」
「その時はデートとでも言えば気を遣ってくれるでしょ」
「お前凄い事言うな……? ……まあ、この時間帯ならもういないか。明日出発するんだもんな」
出発が明日なら、今日のうちに準備を整えておく必要がある。いつまでも学園に残っているわけにもいかないだろう。
「そういう事だね」
「正直、お前が素直に会場に行くって事を伝えていればもっと楽なんだがな。なんで言わなかったんだ?」
俺は思わず気になった事を質問した。別に隠す必要は無かったハズだ。あの大会を観戦するなんてのはこの国じゃ自然な事なんだしな。
「流石に一人で旅行は無理があるからね」
「なるほどな」
確かに少女の一人旅は無理がありそうだな。その点、俺なら一人旅をすると言っても周囲からの反対や怪しまれる心配はしなくて済むというものだ。特に疑われたら一番厄介だと言えるナタクから怪しまれないというのがデカい。あいつが俺の一人旅を不審に思うわけがないからな。
「じゃあ、私あっちで準備済ませてくるから。校門で待っててね」
「ああ。まだ時間はあるから、そんなに焦らなくて良いぞ?」
ミーシャは女子寮の方へ歩いて行った。俺も寮の自室に戻り、すぐに準備を済ませて校門で待機する事にする。




