オリヴィエに会える可能性
「ど、どうしてお前ら男は友達を誘うのにこうも消極的なんだ……!」
「いや、断ってる人を無理矢理誘うのはちょっと……」
風紀委員長からの言葉に、ナタクは気まずそうな表情で返答する。来れないなら来れないで無理に誘うつもりは毛頭無いのだろう。
「そうですよ。明日海外旅行に行くぞって言われて即決で快諾するわけないでしょう」
「彼女以外はほぼ全員即決で快諾してくれたけどね」
「……それ、いつ言ったんです? 昨日では無いですよね?」
「ああ、お昼休みに伝えに行ったんだ。君達は個別の手段で移動する事は聞いてたから立ち寄らなかったけど」
俺とオリヴィエが会場へ行くのは知ってたからな。わざわざ全員で立ち寄る事はせずに、カルラに話を通すだけにとどめたのだろう。
「まあ、少なくともオリヴィエは対応出来そうにありませんからね。流石に公爵家の家族旅行に水を差す程うちの会長はイカれてませんよね?」
「家族旅行に関しては……流石にね? 観戦中に会えたりしたら良いかなってくらいで」
ある意味……観戦中にオリヴィエの顔は見れるかもな。
「まあ、全日程のどこかでは会えるんじゃないんですか?」
「そうよね。一日だけじゃないんだから……って、そうだ。オリヴィエちゃんがどこのホテルに泊まるか聞いた?」
「え? まだ聞いてませんけど?」
「ちょっと駄目じゃない! ちゃんと聞いておかないと!」
俺の言葉に会長は驚いた表情で注意する。
「いや、明日出発するんですよね? それで一日泊まって次の日の大会を観戦しに行って……その時に伝えれば良いと思ったんですが……」
「だから……それを今聞かないでどうするのよ? オリヴィエちゃんが移動したらもう聞き出せないじゃない」
「……大会が始まったら同じ会場に集まるんだから会えるじゃないですか」
「オリヴィエちゃんに会える前提で会場に行くつもりだったの!? どれだけ混んでるかわからないのに!?」
……しまったな。大会当日に俺がオリヴィエに会えない可能性に関しては考えていなかった。俺達が審査官として呼び出されている事を知らないからこの人達目線だと俺とオリヴィエが会えずに大会が終わる可能性もあるというのは理解していたが……観客席で偶然会った体で済むと思っていたが見込みが甘かったようだ。確かに相当混むだろうからな……隣を歩いていても気が付くかどうかわからないのになんで普通に会えると思ってるんだって話だな。




