武器は肌身離さず
「事前準備が必要かそうでないかの違いがあるわけか……触れた物を爆弾にするって事は、下手に攻撃を防いだら即座にアウトって事だよな?」
「触れられたら……と言うのは大げさな表現だが、一部の攻撃は避けなければならないというのはその通りだな」
……流石に触れた物を何でもかんでも爆弾に変えるって魔法では無さそうだな。
「まあ、魔法を付与する魔法だしな……他人から見てもわかる手順はありそうだな」
「ああ。完璧に見切るのは難しいが、判別方法はある。お母様が物体に魔法を付与するのには道具が必要だからな。その道具による攻撃にさえ警戒していれば対処は可能だ」
「流石に触れるだけで発動ってわけにはいかないか……それで、どういう道具を使うんだ?」
「一言で言うと、ハンマーだな。特殊な細工を施したハンマーに魔力を込めて思い切り叩きつけると魔法の付与が行われる。叩き方や力の強弱等で封印の強さが変わるかどうかの細かい条件は知らないがな」
……だから『叩き込む』って表現を使っていたのか。
「そもそもハンマーで殴られたら戦闘不能になるって事を考えると、警戒もクソも無いな」
「ああ。魔法付与とか考えずに魔力を込めて殴り倒せる状況ならそうした方が良いからな。そのため避けられるか防がれるのを前提にした攻撃になるな。基本的には壁や地面に叩きつけて地雷を埋め込むような使い方をする」
「ハンマーを地面に叩きつけるって事は……結構デカいハンマーを振り回す事になりそうだな?」
「大小様々な物があるが、普段から身の丈程もあるハンマーを担いでいるぞ。まあ、これは戦闘だけでなく鍛冶にも用いるから手元から離す理由が無いからというのもあるが」
そんなデカいハンマーで殴られたら普通は一発でダウンするな。って事はその人が魔法の付与を戦闘で行うのは普通じゃない化け物が相手の時という事になるのか。
「そんなデカいハンマーで壁なんて殴ったら穴が開くだろ……」
「まあな。……しかし、そもそも爆発させたら壁も地面も穴が開くからな?」
「それはそうだが……ん? 壁に穴が開いたらどこが爆発する事になるんだ?」
「魔法が付与されている破片だな」
まあ、当然と言えば当然の事か。
「……魔法が付与された場合は不思議と壊れないとかそういうのは無いのか……」
「……そんな不思議現象が発生したら魔法が発動してるってバレるだろ……」
「それは……そうだな。じゃあ、物によっては爆弾がセットされてないとわかるのか。窓ガラスとか」
「ハンマーで叩く必要があるからな。そのためハンマーで叩いたら変形するような物に関しては完品状態であるという事を根拠に安全だと言えるわけだ」
敵にバレずに細工済みのアイテムを持ち歩くのは意外と難しそうだな。
「……もしかしてだが、自分の着ている服を爆弾として利用するのってお前以外にもやってるのか?」
「良くわかったな? ヴィンクラー家に代々伝わる家訓の一つ『武器は肌身離さず』だ」
いやどう考えても物理的に密着させろって意味で言われてないだろ。




