趣味が高じて……
「モンスターの牙や鱗を扱うって事は……解剖の知識や技術も持ってるって事か」
「そうだな。錬金術にモンスターの解体技術。武器職人としての技術……武器を作るための技能はほぼ一通り身に着けているな」
「……その武器に対する執念はどこから湧いてくるんだ……? いや、まあ、お前の家からしてみたら普通の事なのかもしれないが……」
幾ら武器商人の家だって言っても、別に本人が武器を作れなきゃいけないって話にはならないと思うんだが。
「いや、私だって流石に自作する程ではないからな? 単にお母様が武器集めの趣味を元々持ってたんだが……それが高じて武器を自作し始めたってだけだ」
「趣味で武器を作るってどんだけだよ……」
「財力も権力も余りある程持っているからな。自分だけの工房を作らせる事など容易に出来たし、各分野の専門的な知識や技術だって集めるだけならどうとでもなる。恐ろしいのはそれらのほぼ全部を自身のスキルとして習得してしまった事だ」
「いつから勉強を始めたのかは知らないが、普通はそれぞれの分野で専攻するだろうな」
武器という製品……この場合は作品か? 何にせよ、完成品を一つ作るのに一から十まで自分でやる奴なんてかなりの少数派だろう。言ってみれば原材料の確保から素材の精製、その後の加工に仕上げまで一人でやるようなものだ。
「私くらいの年齢の時にはすでに剣や盾のような基本的な物は作り始めていたようだぞ?」
「……って事は入学する遥か昔から武器集めをしていたって事か?」
「そうだな。まあ、それくらいならおかしくはないが……」
「おかしくないのか?」
「……? うちでは皆、何かしらの武器を集めているが……? 好みの武器というのは勿論あるがな」
武器コレクターなのは家族共通の趣味かよ。
「……集めるを通り越して自分で作る境地にまで至ったのは一人だけってわけか」
「ああ。私達と違ってお母様は元々、武器に魔力を叩き込む魔法を持っていたからな。異なる属性を付与させるために錬金術を、それに必要な素材を手に入れるためにモンスターの解体技術を、そこから発展して自分で武器を作るようになったみたいだな」
「その勢いだと、確保するモンスターの素材まで自力で手に入れかねないな。……そもそも道具に魔力を注ぎ込むのって別途に専用の魔法があるのか?」
魔力なんて普通に流し込んで終わりじゃないのか?




