人間もモンスターも同じ
「……武器に属性を付与させる技術を持っているのは理解したが……最初から属性を付けて携帯しておけば良いって発想にはならないんだな。やっぱり他人に使わせるのが前提って事か?」
あえて敵から襲撃を受けてから武器を改造していたらどうしたって後手に回る。それをわかった上でやるって事は予め属性を付与させた武器を複数所持しておく事が実質的に不可能だという事だろう。何故不可能なのかと考えると、他人が使用する武器も一緒に保管していると仮定すると莫大な数になってしまうからだ。
「ああ。拠点を守るって状況を考えると、自分だけが相手に有利を取れててもさほど意味は無いからな」
やはりな……仲間が使用する武器も管理しているとなると必要本数はその分だけ増えてしまう。そしてそこから更に予め属性を付与させた武器を常備しておくと考えると……仮に四属性で揃えておくと仮定しても単純に武器の数は四倍に膨れ上がる。
「拠点防衛で考えたら、本人からしてみたら会った事も無い人物に武器を貸し与える事になるんだよな? 得意な得物がそれぞれ違うって事を考えると、確かに状況に合わせて属性を付与した方が良さそうだな」
それだけじゃない。仲間の扱う武器が統一されているならともかく、剣だとか槍だとか弓だとかでバラけていたら……と、言うか常に同じ人間が身近にいるとも限らないんだから普段使わないような武器も保管しておく必要があるわけだ。……と、考えればとてもじゃないが各属性を予め付与させておいて保管しておくなんて事は現実的とは言えないな。
「……そもそもの話になるが、属性付与と言うのは貴様が考えている程便利な物でもないぞ? 使用者本人との属性相性が悪いと著しく劣化したり、そもそも使用出来なかったりするからな」
「……マジで?」
確かに……異なる属性の武器を使いこなしている奴なんて見たことが無いな。
「ああ。属性攻撃が出来るように術式を組み込むのではなく、魔力を叩き込んで攻撃と一緒に放出するように細工するだけだ。それで適性の問題をクリアしている。そして全て放出すればまた元の状態に戻る。さらに付け加えると、お母様の扱える属性は私と同じで炎属性のみだ。それ以外の属性を武器に付与するには自身の魔力以外で属性エネルギーを確保する必要がある」
「自分以外って言うと……?」
「モンスターの牙だとか鱗だとかの類だな。そういう素材を錬金術で抽出して属性エネルギーを回収する。モンスターにも得意属性の概念はあるからこれで足りない属性を補うわけだ。……もっとも、種によっては個体によって得意属性が異なる場合もあるから見極めも必要になってくる」
本当に属性魔法を後付けしてるってだけらしいな。そして個体によって得意属性が異なるっていうのは、そこは人間もモンスターも同じってわけか。




