戦略スタイル
「なるほどな……敵からの襲撃に対して別の者に時間稼ぎを任せて、自分は迎撃の準備を整えるわけか」
「そういう事だな。さらにこの時間稼ぎには戦闘用ゴーレムを多数投入して情報分析も同時に行う」
「ん? ゴーレムを? それはどっちかと言うと人的被害を減らすためとか、二十四時間隙の無い警備をさせるためとかが投入理由になるんじゃないのか?」
ゴーレムなら不眠不休で活動し続けるはずだ。敵からの襲撃を想定して備えているなら、常に警備させておくのが普通だろう。
「そういう要素も勿論あるが、一番の理由はゴーレムが獲得した情報は伝達しやすく共有しやすいという性質があるからだ。末端のゴーレムが戦闘を行う際、相対している敵の情報を他のゴーレムを経由して回収出来るからな。そこで情報を分析して、迎撃に最適な戦略を立てるわけだ。さらに言えば、お母様のいる防衛拠点は基本的に屋敷か武器工場……もしくは市街地全体とかになるから敵に合わせた装備も揃えやすいし……何だったら作成してしまっても良い」
「作るって……そんな悠長な事をしている時間があるのか? 襲撃を想定しているんだろ?」
「物にもよるが、数分もあれば作れる武器というのもある。例えば既存の武器に魔力を叩き込んで無理矢理属性を付与したりだな。……負荷に耐え切れずに一回限りの使い捨てになるが。まあ、どれだけ時間稼ぎが出来るかだけでなく、情報分析や戦略立案に関しても完全に丸投げ出来るような優秀な部下がいる事が前提になるな。でなければ武器の生産に集中出来ないしな」
武器を新しく一から作るって事じゃなくて襲撃してきた敵に合わせて武器を改造するって事か。
「とりあえず今襲撃してきている敵を撃退出来れば良いってわけか。……で、まず最初にゴーレムに情報収集させて、それを元に装備を整えて反撃に移ると」
「そういう事だな。だからかお母様は基本的に新しく属性を付与するためにあえて未完成品の簡素な武器を大量に持っている。敵に応じて戦うためにな」
合理的にも思えるが……最初から幾つかの状況を想定して持っておくとかはしないのか。本当に身近な場所から奇襲を受けるって状況もあり得るはずだが、やはり自分自身が戦う頻度は少ないと考えているようだな。




