エーテルの使用方法
「液体なら飲むって想像出来るが、固体とかどうやって服用するんだ?」
俺は疑問に思った事を素直にオリヴィエに質問した。
「まあ、削って粉薬として服用するとか、噛み砕いて飲み込んだりだな」
「それだけ聞くと液体の方が使い勝手が良さそうに思えるが……」
「服用方法としては楽かもな。しかし持ち運びの利便性が段違いになる。何せビンに密封して保管する必要があるからな。割れたら終わりだし、フタの閉め忘れでも質が劣化するぞ」
とにかく外気に触れたら一気に劣化が始まってしまうわけか。
「固体だと空気に触れても大丈夫なのか?」
「大丈夫では無いな。だが液体や気体に比べたら密封しやすいのは確かだ」
まあ、ビンやボンベに比べたら相当楽にはなりそうか。
「容器の重量や大きさを抑えられるなら持ち運びには便利だな。保管方法も楽になりそうだしな」
「さらに言うとエーテル自体の体積も小さく出来るから固体化すると価値が跳ね上がるぞ。それだけ精製が難しいんだが」
「……市販で売られているのは液体のタイプだよな……?」
「ああ。現状大量生産出来るのがそのランクだからな。……ずっと昔は気体のエーテルしか製造出来なかったから相当不便だったらしいぞ」
気体のエーテル……単純にボンベが必要と考えると携帯や携行は……とてもじゃないが現実的じゃないな。
「気体とかどうやって販売するんだ? 生活必需品ってわけでもないんだし、定期的に補充してもらうってわけにもいかないだろ?」
「そんなものは知らん。ボンベでも担いで補充して売り買いしてたんじゃないか?」
不便なんてレベルじゃないな……重さの大半がボンベの重量で占められる事になるぞそれは。
「そりゃあ市場から駆逐されるわけだな。と、言うか気体の状態で使用する奴もいなくなるか……」
「確かにわざわざ気体の状態で利用しようなんて物好きはかなりの少数派だな」
「……少数はいるのか? わざわざ気体の状態で利用しようってのが」
「個人の魔術師が質を度外視して桁違いの量の自家製エーテルを扱う場合は、気体で十分と考える魔術師もいるって話だな。今の時代じゃ製造法も容易な上に製造速度もかなり速いしな」
質より量って発想の運用方法でなら今も需要があるってわけか。
「個人で大量消費するってどんな奴だよ……」
「目的としては突発的に大量の魔力を精製する必要がある魔術師だな。職人の仕事のように定期的に一定量以上精製する必要があるなら質や効率を重視した方が良いからな。戦闘を想定して常備する場合でも同様だ。より強力な魔法薬を持っていた方が良い」
まあ、念のために強力なアイテムは常に温存しておきたいってのは当然の心理だな。
「つまり、長期間に渡って作り続ける場合でも、戦闘という短期間での使用に関しても質が優先されるわけだから……何のためだ……?」
「まあ、長すぎず短すぎずの期間で魔力を精製し続けたい場合だな。具体的には数日間の間ずっと錬金術をしたいとか、武器を作成したいとかだな」
「それ仕事でやるわけじゃないよな? 趣味か?」
仕事なら常に工場が稼働しているわけなんだから長期間に分類されるはずだ。趣味で不定期に工房を開いてるとかじゃないと成立しない理屈だろ。




