品質や状態の違い
「そこまで品質に差が出るって、いったい一般人と何が違うんだ? 手先の器用さじゃ説明がつかないような気がするが……」
燃料というジャンルのアイテムを作った結果が薪と油じゃ品質どころの話じゃない。使い道そのものが変わってくるだろう。
「勿論理由は幾つかある。その内の一つが手先の器用さだが……これはむしろゴーレム制作の方に活かされているな。他には錬金術に用いられる材料の正確な計測等があるが……これは使っている道具や設備が強く関わってくる要素だ。一般的なレベルは圧倒しているが、それだけで品質が決定するのであれば、天才などという言葉は生まれないな」
「天才って言うからには何かしらの才能があるんだろ? 指先や道具じゃないって事は……発想とかか? 誰も思いつかないような画期的な技法を編み出したとかか?」
錬金術にはかなり複雑な工程を必要とする手順がある。それを実行するにはそれ相応の準備が必要になるだろう。そういった事前準備や工程の手間やコストの類を一気に解決するような新しい技法を思いついたとかなら、天才と呼ぶに相応しいだろう。
「鋭いな。そういう要素もある。しかし、エーテルの品質に関しては昔と現代で劇的に向上しているというわけでは無いんだなこれが」
「今も薪と油レベルで差があるって事か? じゃあ、超高品質のエーテルを作れるって事実そのものが信じがたい程凄いってわけか」
「そういうわけだ。その最大の理由とされているのが魔力の質の高さだな」
「……魔力の質? 錬金術の技法に魔力を込めるなんて工程があるのか?」
そんな行程なんて教科書には載ってなかったハズだが……下級生では教わらない部分って事か?
「いや、魔力を込めるのは材料の方だ。エーテルと言うのはさっきも言ったように魔力の急速回復が目的だからな。そのエーテルで魔力を補給するのは誰かと言われたら、作った本人という事になるわけだ」
「余裕がある時に魔力を外部に蓄積して、いざという時に利用するわけか」
「そういうわけだな。そのためエーテルは何よりも携帯性が求められる。同じ効果でも、より小さく軽く持ち運びやすい形状で精製出来れば価値は高まるな」
普段は蓄積していて、使いたい時に使用する。携帯性が求められ、より小さく軽量化が求められるか……まるでバッテリーだな。
「その価値が高い状態に持っていけるわけか」
「ああ。エーテルの状態というのは、物質という事もあって、固体液体気体の三つの状態に分けられるのだが……その中でも最も安定性が高い結晶化に成功したらしい。要するにエーテルを固体として持ち運べるというわけだ。一般的には気体や液体として用いるのにも関わらずだ」
「……液体は何となく想像出来るが……気体だって?」
「ああ。気体の状態での利用はかなり手間がかかるな。持ち運びが困難というのもあるが、吸引するのにも専用の器具が必要になる」
「器具が必要なのか」
別に浴びるとかじゃないのか。
「まあ、エーテルガスなんて一般的に流通しているような代物ではないから知らぬのも無理は無いな。外気に触れると一気に劣化するから酸素マスクに似たような器具を使うのだが……これが非常に使いにくくてな。飲み薬として使える液体が最もポピュラーだな」
まあ、エーテルと言われたらそれが一番想像しやすいな。結晶化したエーテルとか逆にどうやって使えば良いのかわからないまであるぞ。




