話し合い
「なんだ、お前らまだ部活決められなかったのか」
すこし意外な答えに驚く。
こいつらならすぐにフィーリングで決めそうなものだと思ったが。
「だったら帰宅部でいいだろ」
入りたい部活がないなら無理に決めることもないからな。
「それで私たちはある答えにたどり着いたのよ!」
「答え?」
エリーが自信満々で話してくる。どんな珍解答が出てくるか楽しみだ。
「入りたい部活がないなら作ればいいのよ! 楽しい部活を!」
「ふーん、頑張れよ」
概ね期待通りの答えを適当にあしらう。
「ちょっと! 他人事みたいにいわないでよ!」
「よそ様の話だろ、そんなの」
「協力してよ! 人数揃わないと部活として認められないじゃない!」
「顧問はどうするんだ? どういう部活にするのかは知らんがちゃんと探したのか?」
「そ、それはどういう部活にするのか決めてから探すわよ」
じゃあ、何も決まってないということじゃないのか?
「お前らこんな見知り発車に乗るつもりかよ? 明らかに頓挫するぞ」
俺からの冷静な意見にとんでもない答えが飛び出してくる。
「いや、どうせ本当にやるはずないんだから、適当に付き合ってやってるだけだって」
「そうそう、一年生しかいない部活なんて絶対空中分解するからね。僕も話だけは聞いてみようかなって」
これ絶対部活として成り立たないだろ。男全員やる気なしじゃないか。
「ちょっと待ってよ!? なんで皆やる前から諦めてんのよ!?」
いや、多分諦める以前に挑戦する段階にすらたどり着いてないぞ。
「嘘でしょ!? なんで男ってこういときモチベーション低いの!?」
「だってそこまでして部活がしたいなら、どこか適当なところに入部すれば良いだけの話だよ?」
「そもそも面倒だろ、人数集めて部活内容決めて、顧問探すとか。しかも生徒会の承認が無ければ成立しないんだぞ」
「つーか、放課後適当なところに集まればいいだろ?」
俺たちの反対意見になおも食い下がる。
「で、でも部室とか貰えるのよ? それに部費だって」
「だから、そういうものを決めなきゃならないから新しい部活は作り辛いんだって」
エリーは俺たち以外、つまり女子たちに話しかける。
「あ、あなた達は!? 部活作りたいわよね!?」
「私はお兄様とご一緒できるなら、その形は問いません。二人きりになると考えると部活に所属するのはむしろ避けるべきかと」
カルラは否定派のようだな。
「私も同じ……あ! 違いますよ!? 皆さんとご一緒できるなら部活でなくてもいいという意味でして……その」
「私は……入る部活決めてるから……協力できない」
さくらもミーシャも否定……。
「そ、そんな」
「いや、その、あれだ。元気出せよ」
「そ、そうだよ……部活なんて作らなくても僕たちは友達だよ?」
協力者ゼロという、ここにいる全員が予想していなかった事態に陥ってしまった。
オリヴィエがいてくれたら乗ってくれたような気がするが、あいつは保健室に行ったあと、寮へ帰ってしまったらしい。
「なんだ、お前らまだ帰ってなかったのか」
委員長に後ろから声をかけられた。
「あ、タッグデュエルの時ジャッジしてた人だ」
「風紀委員長だっけ? オリヴィエと同じくびしょ濡れになってた人」
「え? あの人もびしょ濡れだっけ? 気付かなかったぜ」
「あんたどこ見てたのよ?」
「それは……どこも見てねーよ!」
こいつらが騒いでいるところで委員長は一つ咳払いをすると続けて言った。
「さっさと帰れとの会長命令を無視するとは大した度胸だな? ま、真っ直ぐ帰れと言われて帰るような年でもないか」
話のわかる人で助かったな。
「それより、どうだった今日は? 何か興味のある部活はあったか?」
「いやー、それは」
「そうかそうか、まあじっくり考えて決めると良い。まだ時間はあるからな。それから、ミーシャ……といったな? 君はどうだった?」
突然のことにミーシャはすこし驚いた様子だったが、すぐに答えた。
「ドラゴン研究会が……面白そうなので……そこに決めました」
「ああ、 あそこか! 実に良い部活だよ、あそこは! とても居心地が良い」
居心地?
「そうか、それは良いことを聞いた」
そう言いながら段ミーシャに近づいていき、ミーシャの頭をしきりに撫で始める。
この突然の行動にミーシャは当然嫌がり、委員長から離れるように移動する。
俺の背後にまで移動してきた。
「どうやら、嫌われてしまったようだな」
苦笑いしているところを悪いとは思いますが、突然自分の頭を撫で回されたら警戒しますよ。普通。
それにしても随分と気に入られたな、ミーシャ。
むちゃくちゃ委員長のこと睨んでいるが。
「私はそろそろ寮に戻るが、お前たちも早く帰れよ。それからミーシャ、何か相談したいことがあるなら何時でも聴くぞ?」
「特に、ないので大丈夫です。それに、相談なら……天蓋君にしたほうが、有意義だと思うので、せっかくの申し出ですが、丁重にお断りします」
「そ、そうか。それは……とても、残念だ」
それだけいうと、委員長は帰って行った。
「いいのか? あんなことを言って」
「じゃあ、なんていったらよかったの?」
「それは……、だがあの人はお前の事を気遣ってああ言ってくれたんだぞ?」
「それは、わかってる。でも」
「なんだ?」
「すごく……不愉快な理由で気に入られた気がする……。とても……とても……」
それは、お前……
「何か心当たりがあるのね? あの人が……私の事を……気に入った理由が」
「……」
あの人が、委員長が気に入る理由か。
俺が知っているのは、あの人がどういう人物を嫌うか? その人の特徴ぐらいだ。
その最たる例がクラウディア先輩だ。ああいう人を嫌うならば、気に入るのはその逆ということだ。
俺はミーシャのことを見る。
ミーシャとクラウディア先輩との違うところは、決定的な違いは。
「ミーシャ、お前は間違っていない。お前の言っていることは確かに正しい。だが、それでも委員長がお前の事を気に入っている事も事実なんだ。お前にとって不本意な理由だとしても」
「言えないのね……理由。言えない理由であの人は、私のことを……」
「それは! それは……済まない、俺には、言葉が見つからない」
「大丈夫。大丈夫よ、気にしてないから。昨日今日の話じゃないもの」
「えっと、何の話をなさってるんでしょうか?」
さくらから声をかけられた。
「いや、なんでもない」
「そ、そうですか?」
「ああ、……俺はそろそろ寮に戻ることにするよ。おまえたちはどうする?」
俺の言葉をきっかけにここで解散となった。
男性寮へウィルと一緒に帰ることになった。




