転生即入学
次話投稿のやり方がよくわからず悪戦苦闘してしまいました。早く使いこなせるようにがんばりたいです。
「……であるからして……」
延々つづく理事長のスピーチを黙って聞いている。
俺が異世界に転生してから最初に実行したことは、学園への入学である。というのも転生した後で問題になるのはその世界の文化や知識に対してどうしても無知になってしまうからである。そのためあえて見た目年齢が16歳になるように転生した。この年齢ならば、知識不足を誤魔化すことができ、なおかつ一人でそこらへんを散策していても怪しまれないギリギリのラインだからだ。
学園の入試は実技と筆記試験だけで、案外楽なものだった。もっとも生徒代表挨拶とかに選ばれてはいないので、あくまでも主観だが。ちなみに学費や生活費は必要経費となるらしい。ありがたい話だ。
「……これこそが我が学園の教訓であり……」
どうやら偉い人の話が長いのは全世界共通のようだ。
この学園の生徒数は4000人強、その全員を把握できるはずもなく、しかも会場の中で自由に座れということなので入学式をサボる人は非常に多く、あたりを見回してもまばらに席が空いている。
俺もサボればよかったな。そんなことを考えていると……。
「あ、あの、御隣に座ってもよろしいでしょうか……?」
と不意に声をかけられた。声のしたほうへ振り向くと、メガネをかけた可愛らしい女の子が立っていた。
やや短めの黒髪に優しげな眼から、第一印象は内向的な文学少女といったところか。身長は150センチ後半程度、制服の校章の色は俺と同じ赤。つまり俺と同じ新入生というわけだ。そう考えると女性的な体つきは年齢に似つかわしくないといえるだろう。
どこか挙動不審な雰囲気なのは異性に声をかけることに慣れていないからだろう。
となると、当然ある疑問が浮上する。なぜ俺に声をかけたか? ということだ。席は空いているのだから好きな場所に座ればいい。そもそも俺の隣は五個以上空いているのだから、わざわざ聞く必要もない。
つまり勇気を持って俺に話しかけた理由は……。おいおいまいったな。とうとう俺にもモテ期が到来したか!?
入学式は俺もサボればよかった。ついさっきまで考えていたことなど、もうとっくに撤回していた。
「あの、えっと……」
「ああ、隣でしたね? 全然かまいませんよ」
「あ、ありがとうございます」
そう言うと彼女は後ろへ振り向き手を振る。すると何人かの男女が近づいて来た。
「ここ座ってもいいって?」
「うん。大丈夫だって」
金髪の女の子の言葉に対しメガネの子が答える。
「よかったー! 五個連続で空いてるところ此処しかなかったのよねー」
「おい、入学式の最中なんだからしずかにしろって」
金髪の女の子と茶髪の男が会話している。
あたりを見回すとなるほど、確かに席はまばらに空いているが五個連続で空いているのはほとんどないといえるだろう。だから聞きに来たのか。
え? 俺のモテ期は? 錯覚だった……? なん……だと……
全員が席に座り終える。ヤバイ、メガネの子に話しかけられたとき変なリアクションとらなくてよかった。赤っ恥じゃん。そんなこんなで入学式が終わった。
◆◆◆◆◆◆
式が終わった後、さっきの五人から昼飯に誘われた。俺はとりあえずそのままついて行くことにした。
「いやーそれにしても長かったわね、理事長の話。しかも意味わかんないし」
「おまえ……入学式終わって早々言うことがそれかよ」
「どうせ皆そう思ってるわよ。えっと……」
俺と眼が合う。
「素良天蓋だ」
自分の名前を言う。
「スラ? ということは東国出身?」
「ヤマトって国の名前っぽいな」
ヤマトって日本のことか? 異世界とかいうが逆に何が違うんだ……。魔法の存在か。
「あの、私もヤマト出身です。あ、あの、近衛さくらです。よろしくお願いします」
「そして私の名前はエリー・ブラウンよ。よろしくね!」
「ああよろしく」
二人に挨拶をすませると、いまだに一言も発言していない二人と目を合わせる。
「……私の番。ミーシャ・ゼルマノフ……趣味は読書。ドラゴンに関するものが好き」
ちょっと待って、俺を含めて一番まともな自己紹介してるのこの人だけだぞ。
「僕はウィリアムズ・バートリー。ウィルって呼んでね!」
一人称が僕であること、男の制服を着ていることから男であることがわかる。女にしか見えないのは俺の眼が節穴なのだろう。
「じゃあ自己紹介も終わりね」
「はいちょっと待とうか」
茶髪の男が俺達に待ての号令をかける。
「お前らなにか忘れてないか?」
「そういえば昼飯は何をたべるんだ?」
「あー、考えてなかったわねー」
「俺の名前は?」
「え? まだ聞いてないんだが」
「じゃあ訊けよ! なんで昼飯の話になるんだよ!?」
突然大声を張り上げる。
「いや、完全にボケろという流れだっただろ」
「名前も知らない奴とどう漫才するつもりだよ!」
「それもそうだな。すまない」
素直に謝った。
「はぁ、いいか、俺の名はゲイル・イモータル・アレクサンドリア・ヌル・ネイバー・アレクサンドロスだ」
「……。……。……え? なんだって?」
いま同じ単語が二回出たよな。少し違うか。
「なんだ、もう一度言うぞ」
「ちょっと待った! できれば紙に書いてくれないか」
「ははは、流石に一発じゃこいつの名前はおぼえられないよねー」
「うるせぇ! さっさと飯食いに行くぞ!」
そういうと本当にさっさと歩き出してしまった。まだ名前確認してないんだが。まあ仕方ないから皆で後をついていくことにした。……どうやらおすすめの場所まで案内してくれるらしい。




