優勝したあとの願い事
「騎士様、少しだけ話がしたいんですが構いませんかね?」
「ん? 何だ?」
「あのドラゴン達をわざわざ倒す必要ありましたか? 放っといても消えたんじゃないんですか?」
「何を言っている? さっさと倒さねば次の試合に移れないだろう」
「ですから数分待てば自然消滅するであろうドラコン達を今倒す意味がどれだけあるんですかと聞いているんですよ」
別に意味が少しでもあるなら大人しく引き下がるよ。
「意味もなにもそういう規則だ。ほら時間の無駄だ、さっさと立ち去れ」
「規則ですか……なるほど。そもそもこれだけの試合をほんの三日で戦うのも忙しない事だ。もっとゆっくりするべきだと思いませんかね」
「それこそ栓の無い話だ。そういう判断は別の人間が下す」
「良くわかりました。お時間を取らせてしまって申し訳ありません。……すぐに下がる、急かすなオリヴィエ」
騎士と少しだけの話を済ますと後ろを振り向きフィールドを降りる。すでにオリヴィエはフィールドの端にまで移動しており、さっさとこっちに来いと言わんばかりに俺の事を睨み付けてきている。
「何を無駄話していた?」
「無抵抗のドラゴンを攻撃した理由を聞いただけだ」
「それは規則だとさっき私が言っただろう」
「納得がいくわけないだろ。数分のために退治しただと? その労力の方が遥かに非効率だ」
「何をそんなに怒っている?」
フィールドから降り、そのまま会場から出ようとする直前に俺は一瞬だけ立ち止まった。そんな俺を訝しげにオリヴィエも立ち止まりながら見つめてくる。それに気付いた俺はすぐに歩き始め控え室へと続く通路へと移動した。
「それは……やはり、気に入らないな」
「何がだ? 主語を言え主語を」
「あの騎士共の顔……見たか?」
ああ、そうだ……俺はあいつらが気に入らない。
「騎士がどうした。……見ていないが」
「あいつら、誇らしそうな顔をしていたんだよ。ドラゴンを倒した後……」
「一撃で、だったからな。会場も拍手喝采だっただろう」
違う。倒したから誇らしいのではなく、拍手喝采があったから、賞賛されたから誇らしい。やはり、気に入らないな。騎士がではなく邪魔だから消すという規則が。
「無抵抗なドラゴンを攻撃しておきながらか? なにがそんなに嬉しい? 誇らしい? 誇るべきは強敵に相対した時ではないのか」
俺は何を言っている? そんなこと言って何の意味がある。
「それは騎士の誇りじゃない。戦士のだろ」
「……! ああ、それもそうだな。悪いな、変な事言い出して」
「貴様……身内に狩人でもいるのか? それとも貴様自身そういう生活をしていたのか?」
「……? 何故そう思う?」
「貴様の言っていることはそういうことだろ」
狩か、そうだな。俺が言ってるのはそういうことだ。
「そうだな、その通りだ。せっかく勝ったというのに、イライラする……! 全部あれのせいだ戦いが終わった後に攻撃しやがって!」
「貴様だって不意打ちするだろ」
「それは戦いの中でだ。そこじゃ呼吸一つから瞬きもが駆け引きだろう。俺はただひたすらに停戦の合図がでた後で攻撃が行われたのが気に入らない」
「気に入らない?」
「是正すべきだ。早急に」
そう言えば優勝者には褒美が貰えたな……俺の場合は二つか……叶えるならこれ以外あるまい。




