決着
「連続で攻撃するというが、今まで以上の攻撃なんてあるのか?」
「当然だ。まあ、本音を言わせてもらうとこの試合では使いたくないが」
「まさか予選の時に使ってた魔法か? 確かにあれなら多少のバリアなら貫けそうだが」
あれは相当体力を浪費する魔法のようだからな……今日中に次の試合があるこの状況ではあまり使いたくないというのも頷ける。
「あれは無駄だろうな。発動から発射までに時間がかかる。その隙を見逃してくれるほどお人好しではないだろう」
どうやら違ったらしい。ということは俺には見せていない奴があるということか? ということはこの試合で使いたくないというのは手の内を隠しておきたいということなのか。いや、残り試合自体が少なくなってきているのだからやはりそれも違うか。
「何でもいいが……策があるならお前に任せる」
「ああ」
軽く返事をするやいなやオリヴィエは絶えず行っていた爆撃をひとまず中止し、精神を集中させている。
「これは……手の平に魔力を集めているのか? あれだけ攻撃しまくってまだそんなに余ってたのか、相変わらずの化け物ぶりだね」
「褒め言葉と受け取っておこう」
オリヴィエは大きく深呼吸すると真っ直ぐに相手に向かって走っていった。今までの攻撃パターンと決定的に異なるのは魔法を一切発動せずに相手との距離を詰めようとしているところか。
「魔法なしで突撃……? それにさっきより遅くなってないかい! 僕を馬鹿にしているのかな!?」
「なに、一撃の威力を高める戦術に切り替えただけだ」
そのままレイピアで勢い良く突き刺しにいくが、動きはさっきよりも悪くなっている。あの程度の剣捌きでは威力を上げてもすべて受け流されてしまうだろう。
「そこまでして喰らわせたい一撃ってこれのことかい? 結局僕の護りを貫けないなら大して意味は無いんじゃないかな。随分と期待させておいて……がっかりだよ!」
まさか真っ向からオリヴィエの攻撃を防ぐとはな……しかしこれ程の強度のある障壁だったか? さっきよりも……そうか、いままでのは攻撃の発生を見切る必要があったから本気ではなかったのか。360度どこから攻撃が来るかわからない状態で一方向に意識を集中させるのはまずいからな。
「やはり受け止めてきたか」
「どういう意味かな?」
「ただの性格の話だ。お前ならば私の攻撃を、全力のものならば避けたりしないと思っただけだ。これで私の勝ちだな」
そう言いながらオリヴィエは障壁に直接手を触れた。
「これを直接触れるなんて、いったいどれだけ魔力をこめているんだい? それでも一撃じゃあ貫けたりなんてしないよ」
「一撃でなんて一言も言っていないだろう。戦術を切り替えるとは言ったが、戦い方は最初から変わりはしない。圧倒的な力でねじ伏せるのみ!」
突如オリヴィエの手から火花のようなものが散ったかと思うと閃光が煌めく。そこから発生する爆発は今までの魔法とは明らかに何かが違う。そもそも爆発する瞬間なんて練習の時も見たことがない。煙が落ち着く前に二つの陰が飛び出してくる。
「……! なんだ今の魔法は!?」
「ずっと昔から見続けているだろう! 私は新技など使っていないぞ!」
そう言いながら相手を掴みそのまま地面へと叩きつける。いかに小柄な少年相手とは言え女の力で投げ飛ばすとは……相当鍛えているらしいな。
……それにしてもずっと昔から使い続けている魔法となると、基本的な攻撃方法は変化していないのか。それが何らかの要因が加わりディテールが変化したという事か。変わったことと言えばわざわざ近距離で放った事くらいか? 発動範囲に制限でも……逆か、要因が加わったのではなく減ったわけだ。こいつ、転送魔法を経由せずに直接爆破したのか。
「昔から見続けた……? ……そうか、転送せずに手のひらで爆発させたのか」
「良くわかったな。その通りだ、転送魔法を介入させないことでその分の魔力を更に攻撃力に回し、転送魔法のタイムラグもなくなることで一切のエネルギーロスも無くぶつけることが出来るわけだ」
「確かにとんでもない威力だ……だけどその一撃で僕を倒せなかったのは痛恨だったね。油断しなきゃ二度目は受けないよ」
「フフ、二度目か……ククク」
オリヴィエは不敵に笑い始める。さも面白そうに、格下だと見下すような笑い方だ。
「ぼ、僕を見下すな!」
「悪いな。……お前には今のが一撃に見えたのか?」
「それじゃあ、複数回発動していた……? ありえない! 今の一瞬でそんなまねが出来るはずが」
「流石の私でもあれだけの障壁を崩すのは一撃では不可能だ。攻撃力を上げたと言っても微々たるものだからな。だから連続で爆破した。お前の身体にぶつけたのは四撃目からだ」
連続攻撃……火花に見えたのは障壁に相殺された爆発の残り火だったのか。
オリヴィエひとしきり笑うと、再び相手に近づき顔を左手で掴んだ。
「な、何をするつもりだ?」
「……反応が悪くなっているな。これくらいの速さなら避けると思ったが、存外召喚獣に魔力を回しすぎたらしいな。最後のチャンスだ。降参しろ」
「ま、待って」
「……警告はした」
再び閃光が煌めいた。




