攻撃
「どうやら……君は少々俺の事を侮っているようだね?」
「妥当な対応だろう」
「彼女といい君といい、随分と人のことを見下すな」
「それはお互い様だろう。お前だってオリヴィエ相手に手加減をした。……お前何しにこの試合に出場したんだ?」
「自分の実力を測るためにだ」
なるほどね……今自分がどれくらいの実力を持っているのか確かめるために戦っていたのか。
「ならもう十分じゃないか? これ以上戦う必要もないだろう」
「残念だが行けるところまでは行くつもりだ」
「そうか、それならさっさと帰ってもらおう」
「生憎だが……この程度の攻撃で俺を封じ込めると思っているならば改めた方が良いだろう!」
「……予想の範囲内だ」
矢筒に残っている矢の数を手の感触だけで数える。まだ本数に余裕はあるな。
「行くぞ!」
一歩で俺との間合いを詰め、体重の乗ったパンチを繰り出してくる。やはり矢で受けたダメージは回復しているようだ。その攻撃をいなしながら応戦するも、相手はすぐに距離を置いた。
「やはり回復魔法の類を持っていたか」
「バカな……! 何故回復していることがわかったのだ!? この大会の直前に身に付けた魔法だぞ!」
「わかるに決まってるだろ。さっきまでの手加減した動きで……その程度の動きで避けきれるほどオリヴィエの魔法は甘くない。それが出来た以上お前が魔力を込めて防御能力を上げていたか、あるいはそのダメージを治癒する手段があるかのどちらかだ。そして防御能力が高くないことはさっきの矢でわかった」
もしもこいつが回復ではなく単純に耐久力を高めているのだとしたら、いかに回避する事に集中していたとしても、臨戦態勢のこいつにあの矢が通用するはずがない。いくら何でもあの爆発より威力がでかいはずないからな。
「それでも、目に見えたダメージは負っていなかったはずだ。それなのにどうやって避けきれるはずがないとわかる? 爆風で本人すら詳細は確認できないはずだ」
「そうではない。俺はその程度の動きでは避けきれるはずがないと言ったんだ」
「まさか……」
「気づいたか? そうだ、俺もこいつと戦った事がある。だからわかるんだよ。その速さじゃ駄目だって事がな」
どうやら相当に驚いているらしいな。自分の手の内を読まれた時より動揺している。
「……それで、結果は?」
「お前登録名簿見てないのか? こいつより先に俺の名前が登録されていただろう」
勿論そんな事に対した意味はない。どっちの名前が先かなんて普通誰も気にしない。しかし世の中にはそういう無意味な事でも気にする負けず嫌いは必ずいる。オリヴィエがそのタイプだということは会ったことがあるならすぐにわかる。つまり俺の名前が先に登録されているということは、オリヴィエが名前を登録する権利を先に俺に譲ったということになるわけだ。
「勝ったのか……!? その女に!?」
「何だ? オリヴィエの付き添いだとでも思ったのか?」
「正直、仮装に付き合わされているからな……」
それは……痛いところをついてくるな。
「そりゃあ仲間なんだから互いにリスペクトしあう心意気が重要だろ」
「本当に仲間だったら間違いをとがめるものじゃないのか?」
「別にこれが間違いかどうかなんて……いや、個人的には間違いだが、自分の価値観を押しつけるのは良くないだろ」
「……」
「チッ、つまらない話をしたな。気を取り直して……」
俺は素早く弓を引きオリヴィエに向けて放った。
「一応、リクエストは逆の足だったな」
オリヴィエは再び飛んでくる矢に触れると、その瞬間に転送魔法を発動。そのまま矢は相手の足元へと瞬間移動する。
「そう何度も同じ手を食らう俺ではない!」
「その矢を素手で受け止めるのか、大したものだな」
相手からしてみたら突如現れた矢の対処を迫られる状況のはずだが、見事に俺とオリヴィエの連携攻撃に対応してきている。
「無駄だ。そんな小細工はもう俺には通用しない。正々堂々と一人できたらどうだ」
「最初から正々堂々と戦っているだろう」
「あれが正々堂々だとでも言うつもりか。やっていることはほとんど不意打ちだろう」
「当然だ。飛び道具は一度放つと取り返しがきかないからな。失敗しないように出来る限り楽に、確実な状況が好ましい。つまり棒立ちの標的を狙う事。いや……狙いすら味方に委ねるこの戦術が一番楽で確実なんだよ」
言うのは楽だがまがりなりにも味方を狙って矢を放つ以上それなりの惨事は覚悟する必要はあるがな。
「それがあんな手品みたいな戦い方か」
「そうだ。文句でもあるのか?」
「男の戦い方じゃないな」
「お前……本当に何しにこの大会に参加したんだ?」
誰がどういう戦い方をしようが関係ないだろうが。いったいどれだけの人数がここに集まっていると思っているんだ。
「どういう意味だ」
「そのままの意味だ。男の戦い方だと? 一騎打ちがしたいなら何故この大会に出場した。そもそもあの女は本気で向かってくることを望んでいたはずだ。それが出来ないなら最初に正々堂々を避けたのはお前のほうだろうが」
「何といわれようとも変えるつもりはない」
「ああそれで良い。自分勝手に戦えばいいんだよ、お前のようにな」
だから俺も好き勝手戦わせてもらうよ。お前が全力を出さざるを得ないくらいには。
「俺も身勝手な男か?」
「自覚ないのか? 現に相手の要求は拒否しながら自分は要求しているだろう。お前は戦う相手を選別しているんだよ。勿論それは悪いことではないが」
「違う! 俺は」
「どうでもいいだろそんな事。俺だって、みんなやってることだ」
そう言いながら矢を放った。




