釈然としない表情
「これで少しは本気を出しやすくなったか?」
「ぐ……! まさか味方の魔法を利用してくるとは……!」
「そう驚くことでもないだろう、タッグデュエルなんだからな。そろそろ本気を出す気になったか?」
そう言いながら膝を地面につけている相手の、怪我をしている方の足を蹴り上げる。
「ぐあああ!」
「どうした? さっきより動きが悪くなっているぞ?」
「く……くそ!」
相手はよろめきながらも立ち上がってきた。その足で果たしてどこまで戦えるのだろうな? 初めから本気で戦っていれば未練を残さずにすんだかもしれないというのに。
「どうやらそっちはもうすぐ終わりそうだな? なんなら止めも刺してやろうか?」
そう言いながらオリヴィエは右手でピースサインを送りながらドヤ顔で話しかけてくる。まああれはピースサインではなく次に飛んでくる矢を送り飛ばすための構えなのだろうが。というかすでに準備しているということはそこを狙えということだよな? 普通に射線が喉を貫くように延びているんだが……あれは自身の表れなのだろうな。もしくは目視しやすいからか。
「ああ、必要になったら頼む」
「どこを狙う? ご要望とあれば承るが?」
「順当に考えて逆の足だな。両足封じれば流石に勝てるだろ」
「あくまでも止めは貴様が刺したいということか。まあこの際仕方あるまい、もはやそいつに全力を望むことも出来んからな」
オリヴィエは一瞥することもなく自分が狙っている相手を見据えなおした。
「へえ、不意打ちとは言っても一撃当てるなんて。流石にここまで残ることはあるね!」
「ほう? 味方が負傷したというのに随分余裕だな? 君ならこの状況を覆せるというのかな?」
「そういう上から目線は嫌われるよおねーさん」
「これは失敬したな。それから同い年なのだから気軽に名前を呼んだらどうだ坊や」
こいつも相当悪役が板についてきたな。
「そんなんだから友達が減るんだよ」
「フ、ハハハハハ! 何を言うかと思えば、そんな馬鹿げた事を……聞いたか? 友人が減るだと」
「あ、初めからいないのか」
「……天蓋、貴様の采配はいつもながら素晴らしいな」
「は? 何か言ったか?」
突然こいつは何を言い出しているんだ?
「貴様の行動は実に素晴らしい結果をもたらしてくれたということだ。もし貴様が私の言うことを聞くだけのイエスマンならばこの状況は生まれなかった。取るに足らん安い挑発とはいえ、この私に臆さず物を言ったのだ。買ってやるのがせめてもの褒美というものだろう」
そういうオリヴィエの表情にはさっきまでの余裕は一切なく。いつの間に呼び戻したのか、右手にはレイピアがしっかりと握り締められていた。というか握り締めすぎて手が震えている。
「褒美を与えるって奴の顔じゃないだろ、それ」
「そう言うなよ、こう見えても逆鱗に触れられたのだぞ?」
一目瞭然だろそれは。
「まあ、やるべき事をやれば文句は無いが」
「そこは安心しろ」
「じゃあそっちは任せた」
それだけ言いながら振り返り自分が担当することになった相手を見ると、すでに呼吸を整え、俺に対して構えていた。
「あまり、俺の事を見損なわないでもらおうか」
「もともと、膝に矢を受けたくらいで戦闘不能にしたとは思ってはいない」
「そう思っていながら俺に背後を見せていたのか?」
「ああ、背後から襲いかかってくるようには見えなかったからな」
もっとも襲いかかって来たとしても返り討ちにしたがな。




