口喧嘩
いつの間にか総合評価が100ポイントを超えていてとても嬉しかったです。
これからも頑張ります。
「やっと試合が始まったか」
主審の宣言と同時にそこら中で爆撃音が聞こえてくるのはもはや恒例となっているな。爆発の後に残る土煙と衝撃が、ここが会場内のフィールドの上で、周囲には観客たちが眺めていることすら忘れさせてしまいそうだ。これで血肉が焼き焦げる臭いまでしてきたら完全に戦場へと瞬間移動でもしたのかと勘違いしてしまうだろう。もっともその臭いがしてこないということは、両者ともに捌ききっているという事に他ならないわけだが。
「流石にここまで残るだけのことはあるか……」
「凄いな、お前の魔法を的確に防いでいる。それも直撃するものだけだ」
「ふん……すぐにぼろが出るさ」
「悪いがそこまで待つつもりはない。的をどちらかに絞れ。もう片方は俺が片付ける」
小柄な少年は自分がよけ切れない爆発のみを水属性魔法で威力を最小限にまで抑えている。武術家の方は優れた身体能力と反射神経で攻撃をぎりぎりのところでかわしながらオリヴィエに対して接近戦を挑んできている。要するに俺に対しての攻撃も何らかの策も仕掛けて来ていないということだが、あえて言うならばこちらが飛び道具を持っているためにオリヴィエの方角に向かって矢は放てない。そういう状況を作ろうとしているといったところか?
「随分と冷静でいられるな! こうして近づいていれば矢での援護は不可能だろう!」
「……出来ないと思うならば、試しに矢を放ってやろう」
俺は弓に矢を番え引き絞る。
「私一人を相手にしておけば良かったものを……わざわざご苦労な話だ」
「馬鹿な……この距離だぞ……!? もし外したらとは思わないのか?」
「今まで何を見てきた? この程度の矢ならばかわすなり爆撃で相殺するなり方法はあるだろう」
「そういうわけだ。もっとも私一人で十分だがな!」
オリヴィエはレイピアでの剣戟を続けるが、相手はその動きを完全に見切っておりそのすべてを紙一重でかわしながら攻撃を仕掛けている。接近戦での利は完全に向こうにあるが、それでもオリヴィエが相手の攻撃を防げているのはひとえに相手の技のキレが悪いからだろう。その気になればオリヴィエを蹴り飛ばすことも出来るだろうに……明らかに本気を出していないのがわかる。それとも本気を出せないのか? どっちでもいいが。
「やはり矢を番えたまではいいが、放てないらしいな!」
「だから出来ると言っているだろう」
「なら何故矢を放たない? 味方に当たるのが怖いのだろう!?」
「違うな……俺が怖いのはオリヴィエの体に風穴を空けることではなくプライドを逆撫ですることだ。だからさっさとオリヴィエを追い詰めてくれないか? 俺の出る幕がない」
助けを呼んでもいないのに勝手に援護したら間違いなく逆切れするだろうからな。時と場合によるだろうが。
「窮地を救うなんてそれこそプライドを逆撫でする行為じゃないのか?」
「バカなことを、自分の力不足を棚に上げてプライドも何もないだろう」
「勝手なことを言うな! 私一人で……!」
俺への返答に気をとられていたのか二人への攻撃が少しだけ緩やかになった。その結果反撃を許しかねない状況が発生する。ようやく俺の出番か、そう判断しすぐさま引き絞っていた矢を放った。
「本当に矢を……!」
「それでよけたつもりか? 俺がいつまで魔力を込めていたかも知らんのか?」
「な……」
矢が相手の近くを横切った瞬間に、矢を番えてから込め続けていた魔力を利用し遠隔で魔法を発動させた。そこまでの威力でもないが、近くにオリヴィエがいることを考えればむしろこれくらいの威力のほうが下手な事故もないだろう。
「チッ、余計な真似を!」
「余計な手間をかけさせたのはお前だろう」
「先に余計なことを言ったのは貴様だ!」
「それはお前が先だ。先にぼろを出したのはお前だろ」
オリヴィエはイラつきながらもそのまま押し黙った。過程はどうあれこれで俺も本格的に試合に混じれるな。




