双子の見分け方
「刀についての話はこれぐらいで良いだろう」
「それもそうだな……それより相手の入場はまだか? 随分と遅れているようだが」
「遅れている? すでに近くにいるぞ」
「何……? だがここには私たち以外誰も……」
オリヴィエは辺りを見回し始めるが、そんな探し方では何時間かけても見つけられないだろうな。
「おや? オリヴィエ選手が周囲を見渡しているようですが、どうしたのでしょう?」
「恐らくですが対戦相手のことを探しているのでしょう」
「あれ? そういえばまだ入場してませんね。なにかあったのでしょうか?」
「いえ、すでに入場してますよ。気づきませんか?」
流石にナタクは気づいているようだが、他の人達は気づいていないみたいだが。
「……まさかこんなにあっさりと気づかれるなんてね」
「流石に簡単には戦わせてもらえそうもないわね、姉さん」
「いったいいつから……!?」
「刀についての無駄話をした時からだ。この二人がやったのは隠形術の一種で、姿や気配を消す術だな」
十代の人間がこんな術を使えるとは驚きだな……確か資料には他にも色々と扱えるはずだったか。
「初めから気づいていたの?」
「ああ、この手の術を相手にするのは一度や二度じゃないんでな」
「それは楽しみね。今までの相手は皆私たちの術に翻弄されるばかりだったけど、あなた達なら少しは楽しませてくれるかしら?」
「もっとも、少しばかり道術師を相手にしたくらいで私たちの相手がつとまるとは思えないけど」
双子は交互に、そして時々二人同時に話しかけてくる。ここまでぴったりと口調を合わせてくるとは流石双子と言ったところか。
「おっとすでに入場していたようです! いやー見事な術ですねー、私まったく気がつきませんでした!」
「恐らくこの会場のほとんどの人がそうなんじゃないんですか? 今までの試合も多彩な術で相手を翻弄しながら勝利を収めてきましたからね」
まあ確かにこれだけの術があれば大抵のやつは倒せるだろうな。
「こんな術資料に書いてあったか?」
「なかったな。もっとも他のやつにばれるような術ならば使ってこないと思うが」
「どうするつもりだ? 対策なんてあるのか?」
「それについてはすでに調べてある。試合中にこれを読んでおけ」
そう言うと俺は胸ポケットから先ほど渡された新しい資料をオリヴィエに渡した。
「これは……さっき渡された物だったな?」
「この双子の事について調べてある。剣術部の先輩たちではなく、上杉先輩の知り合いが調べ上げた情報だ。相当詳しく記載されているはずだ」
なにせ専門家からの資料だからな。よもや見逃している術などないだろう。一度も使用していないならばそのかぎりではないが。
「……林雪梅に林雪蘭……確かにこの双子の事について書かれているな。それもかなり詳しく」
「へえ? そんなに詳しく書かれているの? どこまで本当かしらね?」
「身長体重まで詳しく書かれているな。どうやら妹のシュエメイの方が体重は重いようだな」
双子の片割れの眉が少しだけ動いた。どうやらこれは本当らしいな。
林雪梅に林雪蘭……二人は非常によく似ているが、それでも見分けることは不可能ではない。一番の違いは姉の方には泣きボクロがあることか。それに髪も少しだけ長くなっている。着ている服は制服ではなくいわゆるチャイナドレスというやつだな。姉の雪蘭は白いチャイナドレスを着ているのに対して妹の方は赤い服を着ている。スカートの丈も姉は踵の近くまで長いが妹は膝上数センチといったところか? とにかく非常に対照的な服と言えるだろう。恐らく見分けがつくようにわざとそういう風に変えているのだと思われる。




