オリヴィエが用意した衣装
「……ちょっと待て、この衣装は何だ?」
「色々考えた結果これが一番だと判断したのだ。これはヤマトの国に跳梁跋扈しているとされている異能集団、忍者の着ているとされている装束をモチーフにしている」
どんだけ脚色されてんだよそれ。まず妖怪じゃあるまいし跳梁跋扈なんてしてないし。異能集団でもないし。
そもそも忍装束出すなら亀の甲羅の時に出せよ。
「ニンジャ!? マジかよ本当にニンジャの服じゃねえか!?」
「に、忍者……? え? 何、そういう職業があるの?」
「はあ!? エリーお前……ニンジャ知らないとかマジで言ってんのか!?」
「え! 皆知ってるの!? 私がおかしいの!?」
むしろ何でこんなに知名度あるんだよ……かなり間違えているが。
「世界的に有名な存在だぞ? ニンジャにサムライと言ったらヤマトの国を象徴する存在だからな」
「あ、あのー……」
「ん? どうした?」
「その……ヤマトに忍者なんていませんよ?」
「お前らって絶対ニンジャの存在とか否定するよな」
本当にいないんだから当たり前だろ。少なくともお前等が想像している忍者は実在しない。
「あ! もしかして……ニンジャの存在をバラしたら本国に強制送還されるとか……?」
なワケねーだろ! 本気で言ってんのか!?
「ウィル! それだよそれ! だからお前ら頑なに認めねーんだな?」
逆にお前らはどうしたらそこまで頑なに忍者の存在を肯定したいんだ?
「いえ、そういう事ではなくて……絶対にいないと言ったら嘘になるかもしれませんが、皆様が思っているようなものではないかと……」
「まあそんな事はどうでも良い、さっさと着替えてこい」
「駄目だ、それは出来ない」
「何……!? 出来ないとはどういう事だ!」
「見ての通りだ、こんな不完璧な忍装束は着ることは出来ない」
そもそも二刀流に忍者の服っていう組み合わせが有り得ない。いや、ある意味では二刀流忍者は正解だが、オリヴィエが用意した衣装では決定的に足りない物がある。
「不完璧だと……? 納得のいく説明をしてもらうぞ」
「まず第一に忍装束は真っ黒ではない。……が、これはオリヴィエ、お前の家系が黒を好む家系だから良いとしよう。問題は防具がないという事だ」
「防具?」
「そう、脚絆に手甲、それになにより鎖帷子がないだろう」
諜報活動目的ならばともかく、流石にこれらをなしに戦闘は出来ない。
「く、鎖帷子……?」
「簡単に言うとチェーンメイルの事だ。これから戦闘を行う以上戦う為の装備を揃えるのは当然のこと。それが揃っていないのだから着替える訳にはいかない」
「ぐ……! 確かに必要な物が揃っていない以上着替える事は出来ない……!」
「そ、それで納得するんですね……」
「別に無くても問題ないんじゃ……?」
それは違うな。
「駄目だ! 戦場に誤った服装で出陣する訳にはいかない! 残念だが次の試合は制服で戦うしかない」
「そんな! どうにかならないの!?」
どうにもならないな。諦めろ。
「あの……制服の下にそれを着れば良いんじゃないでしょうか……?」
「制服の下に? 何故だ?」
「変装中に防具を身につける事は無いので、それならば問題ないかと」
「……つまり学生に変装しているニンジャならば鎖帷子などを着込んだりしないのか?」
「変装中はバレないことが最重要視されますからね」
控え室の中から歓声が上がった。確かにこれならば条件に合うからだ。
いやふざけんなお前……学生に変装って、そもそも学生なんだから変装じゃねえだろ! しかもなんでさくらがそういう事に詳しいんだよ!?
「何だよ! それなら大丈夫じゃねえか!」
「お前等冷静に考えろよ!? これ着た上に制服着るんだぞ!?」
「途中で脱げば……」
「そういう問題じゃない!」
まずい、まずいぞ……このままでは本当に忍装束を着ることになる。亀の次に忍者って、どこのティーンエイジミュータントニンジャだよ。
「しかし問題が解決した以上着替える必要性があるだろう」
「嫌だって言ってんだろうが!」
「子供じゃないんだから我が儘言うな」
「これ着る方が子供だろうが!」
だ、駄目だ……このままでは本当に……これは、面倒な事になった。




