プロローグ
今回が初投稿になります。誤字脱字が少なくなるように努力します。出来るだけこまめに投稿するよう頑張ります。
「お呼びでしょうか、閻魔様」
閻魔様に呼び出された俺は扉を開いて直ぐ質問した。
整然とした部屋は、ここが地獄とはかけ離れているといえるだろう。
「ええ、よく来てくれました。どうぞこちらへ」
言われるがままに椅子へ座る。
相変わらず閻魔様は微笑んだままだ。
「貴方に出張を命じます」
そう言うと、一枚の紙を取り出し俺に見せる。
読んでみると色々な事が書いてあるが、要するに地上界へ行けとのことだ。しかし……
「人間に転生せよ……ですか」
そう、どういうわけか人間に転生してから地上界へ行けと書かれている。何故わざわざ転生などという面倒なことをしなければならないのだろうか。
「直接地上界へ……では問題があるということですか?」
「その通りです。貴方自身では警戒されてしまいますからね。それに貴方は地上への影響が大き過ぎます」
急に真剣な表情で俺を見つめる。
なるほど、確かに人間の肉体ならば俺の力はかなり制限される。そんな俺を馬鹿が油断して秩序を乱していたら直接生け捕りにせよ、ということか。
「では、準備が整い次第すぐにでも」
「期待していますよ、ヴリトラさん」
「御意」
そう言うと俺は部屋を後にした。
◆◆◆◆◆◆
ところ変わって地獄の広報部に顔を出す。これから出張する地上界の資料を貰うためだ。なにせ地上は三千世界と謂われるほどの、具体的には約10億の異世界が存在するからな……とても把握しきれるものではない。
「長官、こちらが資料になります」
係員の死神が資料を俺に差し出す、それを受け取ると係員は深々とお辞儀をすると再び業務へと戻った。俺は近くの椅子に腰掛けて資料に目を通す。
「勘弁してくれ」
思わず声を出してしまった。これから俺は転生してアイソルート王国とかいうところで生活するわけだが、なんでそこで名乗る名前が『素良天蓋』なんだ? 世界観考えろよ、まるで意味がわからんぞ!
いや、そもそも俺の価値観と向こうの価値観が異なる以上、外国人という体裁の方が怪しまれないのか……
そんな事を考えながら資料を読み続けていると、後ろから声をかけられた。
「長官! こちらにいらしたんですね!」
相変わらず元気のいい声だと思いながら声の方へ振り向くと、俺の部下の旭川鼎が走って近づいて来るのがわかる。腰まで届くほど長い黒髪は、普段はポニーテールにしているが、何故だか今日は結んでいない。服装はいつもと同じ和服だが、むしろ今の髪型の方が似合っているといえるだろう。いかに羅刹女が美人揃いとはいえ、このレベルはなかなかいないだろう。
「出張するという話は本当ですか!?」
「本当だが、それがどうかしたか?」
突然の質問に冷静に答える。
「どうかしたかではありませんよ! 出張するということは餓鬼道を留守にするということですよ! 治安維持はどうなるんです!?」
「他の誰かが長官に就任するだろう。そもそも治安維持とはいえ、いったい誰が問題を起こすと言うのだ」
そう、餓鬼道とは無限に広がる砂漠地帯。そこの亡者つまり餓鬼達は常に飢えと渇きに苦しんでいる。誰かの手を煩わせる体力も気力さえもあるはずがないのだ。
「それは……そうですが……」
不服そうな表情をしている。そういえばさっきから慌てているようだが、そんなに異常か? 俺の出張。髪を整えることを忘れる位。
「とにかく、留守はまかせたぞ。他の奴らにも伝えておいてくれ。あいつら有給休暇取っているからな」
「有給を……?」
「ああ、二日酔いらしい。見舞いに行ってやれよ。どうせ向かい酒してるだろうが」
「認めたんですか!? そんな理由で!?」
「……有給だぞ?」
なんでそんなに驚いているんだ。理由についてか? 無くても有給休暇だから別に問題は……まてよ、なんであいつら理由付けて有給取ったんだ? 何か勘違いしてるのか?
「留守はまかせたぞ」
面倒だから考えなくていいか、問題はないわけだし。
そんなかんじで色々あった後、異世界転生の準備が整った。
これからの俺の人生はどうなるのか、期待と不安の両方が混じった、妙な緊張感を持ちながらも俺の異世界転生生活は始まったのである。