永遠には、まだ遠い。
~10年前~
恋をしていた。 また、恋に落ちてしまった。
18の秋に大きな失恋をした私は、愛が“永遠”でない事を知る。
“永遠”を信じない方が、失った時の傷をかばう事が出来る。
永遠なんて信じない・・・そう、決めていたのに。
付き合って9ヶ月になる。
逢う度に、彼への思いが大きくなっていくのが、自分でも手に取るように分かった。
この恋がいつか終わるとき、私はまた大きく傷付くに違いない…
そう思ったら、大好きな彼の笑顔さえ、怖かった。
街はせっかちで、11月に入ると光が散りばめられる。クリスマスを待たずに、私は十代を卒業する。
『二十歳の誕生日に指輪をプレゼントしたい。』
そう言いながら、無邪気に照れくさそうに微笑む彼。この笑顔を私はいつ? 失ってしまうのだろう。
永遠を意味するのに最もふさわしい贈り物“指輪”
指輪を贈り合って、
永遠を誓い合って、
そして別れた恋人達がどれだけ居る? いつか私たちもそんな恋人達の1組になるのだろうか。
だって私達は、まだ二十歳・・・。
自信の無い自分自身も、若すぎる自分達も、もどかしかった。
『女の子に“指輪”とか・・・、そんな軽く言ったらダメっしょ?』
彼の口ぶりを真似しながら、かわいくない言葉を返す私。
好きで、好きで、大好きで、だから不安で怖くって・・・助けて欲しいのに不器用で言葉に出来ない。 そんな気持ちの表れだった。
『“軽い”って…思ってんだ…』
低い彼の声が、いつもよりもっと低く、12月の冷たい風に消えていく。
自信の無さが、自分の弱さが、大切な人を傷つけてしまった事にハッとした。
〜二十歳の誕生日〜
私は彼にブレスレットをもらった。
ムーンストーンをシルバーのチェーンが結ぶブレスレット。白く曇ったムーンストーンは当時の私に似ていたから。
自分の気持ちにさえ、まっすぐ向き合うのが怖くて、大切な人への想いにまで霞をかけて・・・。
永遠にはまだまだ遠い“二十歳の恋”
歩く早さで、ゆっくり、ゆっくりこの恋を育てていこう。
そしていつか、臆病な私が“永遠”なんて言葉を信じられるようになるまで、ずっとそばに居てください。
そんな思いを胸に、二十歳の夫の隣を12月の光の中、二十歳の私は歩いていた。