002ページ 魔王様、自覚する
操作を覚える為連投失礼します。なお下記の表現がありますのでご注意・回避下さい。数行の表記程度なので読む読まないは自己責任でお願いします。
・想像でイジめる表現が若干肉体的なので痛い
娘っ子部屋を後にして、玉座とやらを見に行く事にした。つか、さっきチョッキンされた子が傷付けたとかいう椅子じゃないだろうな。
私がウロついていたのは二階。玉座の間は一階で、結構奥まった辺りにある。つか、一階は霧がずっと足元にあるなあ。
どこぞの神殿かって位に高い天井、何かの石? で出来た壁に床、常に薄暗い為明かりが点々と灯っている。柱に変な染みがあるの怖いんですけど。
二~三階分ぶち抜きな背の高い扉。そして広がる大空間。小さい頃学校の体育館広いって思ったけど、あの感覚に近い。
正面奥、私の身長よりはるかに高い階段と雛壇があって、中央にポツリと椅子がある。
だがその階段の手前に何やら大きい人? が居るんだけど嫌な予感しかしない。
「そう言えば君の名前聞いてなかったね。なんての?」
「当方の名前でございますか? バランと申します」
「バラン君ね。分かった」
「は。恐悦至極にございます」
玉座まで距離あるからそんな会話してみたら、大きい人が低い唸り声漏らしてた。
「グルルルル……執事ごときが……」
聞こえてるよ、情けない呟き。教えてやらんけど。
近付いていくと大きい人が頭を下げて片膝を着く。バラン君が止まり、こちらは流れるような動きで腰を折った。
「これより先は陛下の領域。当方ごときは近付く事さえ出来ません」
「ふぅん?」
比喩なのか分からないが、玉座って言う位だから魔王様だけの場所ってのはまあ、理解が及ぶよ。
私がヒョイヒョイっと階段を上がって、体格に合ってない豪奢な椅子に座る。いやあ、足プラプラしちゃうわ。
「で、君は誰?」
「はっ! 新王陛下、まずは無事目覚められた事をお喜び申し上げます。恐れながら自分は、魔王軍第壱獣軍団を先王陛下に任されたメディアと申します」
大きい人、もといメディア君はライオン頭の魔獣のようだった。たてがみフッサフサでモフりたい。あれ? だから黒豹のバラン君が気に入らない系?
「先王陛下はどんな手段でも構わないので人間の領地を奪ってこい、魔力の高い娘を生け捕りにして献上せよ、と自分に命令を下さいました」
「ああ、うん、そうみたいだね」
「では、新王陛下も同じ事をご所望ですか?」
「私が? いいや、どちらも要らないよ」
「なっ…!」
「世界征服まっしぐら、も悪くないんだけど。先代は生きてるうちに果たせなかったんだよね。どうせ人間側に勇者が出てきて足止めくらったんでしょ」
「はっ…。仰せの通りです」
ははん、王道ファンタジーって言ったら人間の希望、勇者。魔王様は知ってるもんねっ!
「先王陛下は先の戦で勇者に討ち取られました」
あれ、傷深そう。まあ、よく考えれば私が『新しい』んだから、前が崩御したってのは妥当か。人間みたいに隠居とかなさそうだし。
「ですが、すぐにも新王陛下が立たれたと聞き、こうして新たな命令を承りに来た次第です」
いやだからね。
「先代が倒されたって事は、先代と戦った勇者も無傷じゃないんだよね?」
「はい! ですからすぐにでも追い討ちをかけて」
「だめですぅ」
勢い込んでまくし立てようとしたメディア君に水を差す。いや、水をぶっ掛けるって言うのが正しいな。
「そんな警戒最強のところに兵を出してもいたずらに消耗するだけ。泥仕合になるって分かってて派遣はしないよ」
「な、なるほど…」
「でもまあ…先代を倒したっていう勇者には興味あるなあ」
あ、ヤバい。顔が歪む。
「勇者って事は強いってことでしょ? 肉体的に削ってもいいし、精神的に剥がしても耐えてくれそうだなあ」
ああ、どうしよう、今は傷付けたい気分のようです。んはっ、想像だけでも結構楽しい。私って外道? いやいや魔王様です! 常識ってやつとは若干ズレているのだよきっと。
「それがご所望でしたら…憎き勇者であろうと生け捕りにして参ります」
む? 正気に戻る私。
「だからだめだって。メディア君、見るからに見た目が人間じゃないんだもん。行けば必ず敵認識されるでしょ」
「で、では、人間に近い外見の魔獣を選び抜いて送ります」
「それって私により近いって事だけど、本当に大丈夫?」
「そ、それは…」
言いよどんだ。やっぱりね。
魔物・魔獣ってのは、基本的に人型にはなれるだろうけど、それと分かる特徴があったり、人間もそれを見破る道具なんかを編み出しているケースが多い。人間よりも多く魔力を保有する代わりに、人間離れした外見や能力を持つっていう比例の法則もありそうだ。
例えば今ここにいる二人。言ってみれば今彼らも人型だけど、最初の印象どおり『人間みたいに二足歩行しているが獣の特徴を持つ』というのが限界なんだろうな。
「バラン君、君から見た意見を聞きたいな。私より人間の外見に近い魔獣、知ってる?」
「いいえ、陛下の今のお姿が最も人間の外見と同じ系統かと存じます」
「だってさ、メディア君。私の望みを叶えてくれようとする気持ちは嬉しいけど、それで魔王軍が消耗するなら私はその作戦を許可しないよ」
「は…。慈悲深きお心、感謝します」
「ついでに聞きたいんだけど。あ、メディア君にもバラン君にもね」
「「はい」」
「今の私の姿、の肩に乗れる位小さな鳥とか猫とか犬とかに擬態できる子、知ってたら教えて?」
にっこりと微笑んで言ってみたら、二人とも絶句した。私に直接意見できる位だから、頭良い方なんだろうなこの二人は。てえ事は、私の台詞にとんでもない爆弾が含まれているのにも気付いたんだろう。
うっふふ、面白い事思いついちゃったなあ!
20150102修正。改行を追加、複数人の台詞を『から「×人数分に変更。