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001ページ 魔王様、目覚める

いきなりですが下記の表現があります。苦手な方はご注意。実行していない主人公と世界観の比較ですので、読む読まないは自己判断でお願いします。

・主人公が自分の下半身観察

・胴と首離れて血だまり

・に、対して常識外れの台詞を吐く

・女性暴行発言と拉致監禁


 目覚めるとどこかの薄暗い部屋…それも寝室だった。

 寝具はフカフカ、紗のカーテンみたいな物まで付いてゴージャス感が半端無い。

 私の部屋、こんなじゃなかったはずなんだけど…。


「知らない天井だ…」


 オヤクソクってやつを呟いてから起き上がると、ふと何かを感じて目線を上げた。


「誰?」


 どうしてその『何か』が『人』なのか、私自身、無意識に口から出た台詞に驚いたんだけど。

 もっと驚いたのは、姿を現したのが『人』ではなかった事だった。いや、二足歩行はしてるし服着てはいるんだけどね…。


「おはようございます、陛下。無事お目覚めした事、お喜び申し上げます」


 多分黒豹。の、頭がそこに乗っていた。袖口からも黒毛が見えた。うん人の体毛であんな黒くならんし、濃い色の肌でもあれはあり得ないね。


「…陛下?」

「貴方様をおいて、当方がそうお呼びする方は他にいらっしゃいません」

「私の、事」

「左様でございます。当代の、魔王様」


 なぬ?


「先代様も最初はそうして不思議そうなお顔をしておいででした。しかし、この城内で貴方様ほど強い魔力を持つ者はおりません」


 …え、魔力? 私そんなもん備えてんの? 自分じゃ分からんわ。

 とりあえずゴリゴリのファンタジー世界なんだなここ。

 つか…あれ? 目覚めたってわりには前後の記憶が…うーんと、薄いって言うのかな、この感じ。

 自分が分からないなんて、もっと慌てるもんじゃないか? でも…逆におかしいのかな。心穏やかなんだよねえ。


「ひとまずお食事はいかがですか?」

「ご飯?」


 状況はよく分からないけど、腹が減ってはなんとやら。空腹では頭が良く回らないのは知っていたので頷いて、寝台から立ち上がる。

 が、ここでもひと悶着。


「え、なんでこんなチビ? つか、()、ん、あれっ?!」


 白くてきめ細かい肌、細長い手足、肩より黒い黒髪。問題なのは、下半身に何も無いって事。男なら前にナニが、女なら後ろにアレがなきゃならん。

 でもちょっと待て。魔王様っつったよねこの…執事(仮)。


「素朴な疑問なんだけど」

「当方ごときでお答え出来るならば何なりと」


 よどみなく下から来るなこの人。


「魔王に性別ってあるの?」

「性別は自由に変えられる、と先代様は仰っておられました」

「先代はいつもどっちにしてた?」

「猛々しいお方で、戦闘に有利だからと男性型をとっておられました」


 好戦的だったんだな先代。まあいいんだけど、こだわりもないし私も男性型にすんべや。

 と、思った途端、変化が起きた。体の中で何かがムズッとしたなと感じたら、うん、まさに子供の体に子供のナニがあるわ。


「服ある?」

「こちらに」


 と、示されたのはタンス…じゃなくて、隣の部屋。すげえ! 衣裳部屋だ!

 …とか、浮かれたのは数分。量が多すぎてすぐに辟易した。執事(仮)がアレコレ薦めてくれたのも面倒なんで、前釦留めする黒い長袖のシャツと、ジーンズみたいなちょい硬さがあるボトムス。膝下までのブーツ見つけたからインしてやったでえ。

 マントを肩に羽織るよう薦められたが却下した。お子ちゃま姿でそれは馬鹿っぽいからだ。


 で、部屋移動。

 ベッドのゴージャス感からして予想はしてたけど、ここ、城です。西洋風の、すげえな通路に絨毯ひかれてる。

 侍女らしい二足歩行の姿がちらほら。深く頭下げてるから顔つきとか種類は分からない。

 着いた先には(私がチビだからってのもあるけど)大きな観音開きの扉が。開けると食堂…じゃ、ない。なんだここ。

 執事(仮)とは別の、従僕? 数人が居た。輪になっている。


「お……るし、を…ど、か……じ……お……」


 切れ切れに聞こえたそれに気付いて、私は目線を床に落とした。従僕達が輪になっているその中央に。

 最初何か分からず、首を傾げた。『それ』が動いたので近付いてみて、ようやく理解。

 ぼろ雑巾よろしく汚れた誰かが身を小さくしてうずくまっていたのだ。


「顔を上げなさい」


 私の背後から執事(仮)が――そういや名前も聞いてないな――私に向けるのとは別人のような声音を放つ。


「これ…」


 ヒュガッ

 背後の執事(仮)に話しかけようと半身を返している最中、私の耳にそんな音が届いた。反射的に音がした方の目を閉じた次の瞬間、ビチャリと生暖かい感触。うん?


 前を向く。足元に広がる液体と、それを生み出す源泉がグラリと傾いで地面に倒れた。

 赤い断面が私に向けられている。ドプドプと池が加速度的に広がっていく様は、ひどく現実感が伝わらない。でも、良い気分でないのは確か。

 うーん、流血に慣れてるのは職業とか性別とかでだろうけど、ここまでスプラッタに動じないのはなぜだろう? 医者、警察、牧場とか屠畜(とちく)場勤務…辺りだったのかな?

 映画って線もあるか。

 どれにしろ、今の私の精神はあまりマトモじゃないのは分かった。思わず口から出た台詞が物語っている。


「あーあ、せっかく着替えたの、に?」


 黒いシャツとは言え左側が汚れたのを眺めていたら、染みがみるまに霧状となって生地を離れ、浮き、私の手に集まってきた。

 そして霧が消えると同時に暑さを感じた。で、シャツを見ると……わお、染みひとつないとかマジすか。

 しかし何で暑くなったんだろ? もうちょっと……。

 と、思った途端にまた。

 足元に垂れ流しだった液体が霧状に変化していき、上昇してきた。

 おお、やっぱ間違いない。この霧状のに触れると暑くなるんだ。手を伸ばすと、その手めがけて霧状のそれがまとわりついてきた。


「ところでこの子誰?」

「この子、とは……処断した者でございますか?」

「そう。え、何この子やらかした系?」

「は。この者は陛下が座られる椅子を傷付けた為、食料として処断致しました」

「椅子傷付けただけで、命であがなえって? うわあ、先代暴君だなあ」


 でも赤い霧は次々と立ち上ってくるから手は引っ込めない。なんか面白いんだもん。


「ん、もしかしなくても、食事ってこれ?」

「はい。その霧はその者が持っていた魔力。魔力は魔素が源となります。陛下はこの世界で唯一、漂うだけの魔素を体内に取り込み魔力に変換し放出が可能な、無二の能力をお持ちです。ただ、他者の魔力を取り込む事も可能でして、先代様はそれを食事と呼んでおいででした」

「てことは、私以外の魔獣は丸ごと食べる系?」

「左様でございます。魔獣、魔物は他者から魔力を奪う際には、肉体ごと取り込まねばなりません」


 なるほど食事ね。ガチなやつね。


「足りなければ次の用意はございます。恐れ入りますが別室にご足労をお願い致します」

「え~? もう血まみれはやだ」


 見るのも浴びるのもな! 多分嗅覚も瞬間的な馬鹿になってるもんで平気なだけだろうし。


「用意してございます」


 黒豹の執事(仮)が恭しく頭を下げて、また先導してくれる。またでっかい扉を潜ると、さっきの寝室に似た部屋だった。今度は侍女が二人、待機していた。

 その侍女が動いて紗幕を左右に開くと、人間が寝台に転がっていた。oh......


 天蓋が動いたのに合わせて空気が流れたせいか、タイミング良くその娘が意識を取り戻したようだ。つっても猿ぐつわに後ろ手縛られてるし、足首もガッチリ縄が。

 めっちゃ怯えてますね、うんそうだろうね。間違いなくパクッてきたかカツアゲしてきた系だねっ!


「今度は先に説明求む」

「はい。人間の中でも魔力が高い者です。先代様は娘を所望しておられた為、同じ系統を」

「さっき肉体ごと云々聞いたばっかだけど?」

「陛下もそうですが、先代様も血液で充分な為、人間の娘はその時々でございました。多かったのは伽でしたが、どこまで骨折りして生きていられるか試したり、生娘はなぶるたび流血するのですすっておられたり、」

「うんもういい。お腹いっぱい」

「は。食事はよろしいので? ではこれは食べずに運動に使いますか?」


 先代、ヤるの運動言ってたんかい。あながち的外れじゃねえけどさ。何だかだんだん物語の中の悪役まんまな気がするぞ先代め。いや、魔王様だからか。

 むーん、私は善人ではないけど、というかむしろ立場的に悪人だけれども、そういうのを抜きにしても、好き嫌いを無視されるのは気に入らない。普通の感情はあるんだぞ。


「…食わんし使わん」

「はっ…。陛下のお言葉に、従います」


 私のプチ不機嫌が台詞に出てたのか、執事(仮)が尻すぼみに音量を絞った。

 私としては娘に気移りしててどうでも良い事だったが。

 さて。

 ブーツ脱ぐのが面倒で、そのまま寝台に上がり、何とか後退りする娘の足首を掴んだ。それを払おうと手の中で動く感触が伝わってくるが、あまりに弱いから気にしない。えいよっと。

 呆気なく娘は引き寄せられ、バランスを崩して仰向けに。ワンピースみたいな服を着ていたが、裾は大きくめくれてあらやだ、撫でたいなあ舐めたいなあこの太もも。


 …はっ! いかん本題からズレた。

 足首の縄に触れる。何となく引きちぎれる気がしたからやってみたら、すげえ簡単に出来た。猿ぐつわも人差し指を差し込んで引いただけ。

 あ、馬乗りになったんで気付いたけど、この娘っ子可愛い顔してるわ。涙流すと不細工になるもんなのにねえ。いやしかしS心くすぐるよな泣き顔って。

 私はにっこり微笑んで濡れた頬を優しく撫でた。


「初めましてお嬢さん。今のところ君を取って食おうとは思わないけど、あまりうるさくされると困るから、なるべく静かにしててね」


 茶色っぽい瞳を見つめながらゆっくりめで言ってやると、数秒の間を置いて娘がこくりと頷いた。

 ん、素直でよろしい。

 尻の辺りを探ってみて、同じように縄を引きちぎった。しまった! うっかりスケベのチャンスだったのに。


「はい、取れた」


 上からどいて床に着地っと。…おや?


「なあに?」


 娘っ子が何か言いたげ。尋ねてあげたんだけど、ビクッてして俯いちゃった。そんなに怯えなくても。うっかりイジめたくなるじゃん。

 執事(仮)を見た。「ねえ」って横柄に言ったのに、律儀に「はい」と返事する直立不動な黒豹。


「人間の食事、用意出来る? 無理なら食材と調味料があれば私が何とかするから」

「……仰せのままに」

「あー、いや、無理ならちゃんと無理ですって言うんだよ? いいね?」

「は、はい」


 おうおう、めちゃくちゃ動揺してるわ。はっはっは、こいつもからかいがいがありそうだなあ。

 という訳で娘っ子には部屋から出たら命の保証は出来ないと念押しして置いといた。侍女も付けとく。

20150102修正。全体的に執事→執事(仮)に変更。改行を追加。

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