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破格の家賃で好条件のアパートの一室。 事故物件ではないのですが、安いのには理由がありました。

作者: にょん
掲載日:2026/07/29


 怪談話でもないのですが……。


 ここで、私の聞いた話を一ついたしましょう。


 私の知り合い……そうですね、仮にA子さんとします。

 

 A子さんは、一人暮らしをしようと思って、不動産に行ったんです。


 担当をしてくれた男の人はとても良い方で、

 都心駅近の1LDKを格安で紹介してもらったそうなんです。



 築3年、バストイレ別で、オートロック付き。それで家賃は5万円。



 さすがにここまで安いといわくつきなのかな…って思いますよね。もちろんA子さんも不安になって聞いてみたそうです。


「もしかしてここ、事故物件っていうやつですか」


「いえいえ、そんなことはありません。まぁ、訳ありと言えば訳ありなんですけど……」


「訳ありですか?」


「ああ、はい。なんというか、設計ミスってやつなんです」


「はぁ……設計ミス」


「はい。こう、壁材の発注ミスかだかで、通常の物件より壁が薄いんですよ。いわゆる生活音っていうのが漏れやすくなっているといいますか……。ああ、もちろん耐震性とかの安全面は基準値超えてるんですよ」


 ああ、なるほど、確かに神経質な人にはきついかもしれないな。って、A子さんも考えたんです。でも、結局彼女、そこに決めたんです。


 そうして暮らしてみればなかなかで、まぁ、確かに不動産やさんが言った通り、

 隣室からも生活音が漏れ聞こえてきたそうなんです。

 でも、A子さん、そんなに神経質な方ではなかったんで、すぐにその音にも慣れてしまったそうです。


 そうしてしばらくたったある日。隣室の方が同い年ぐらいの男性だってことが分かりまして、まぁ、ここは詳細は省きますが、縁あって二人は恋人同士になったんです。


 A子さん、壁から漏れる音も、愛する彼の生活音だって思うと、悪い気はしなかったって言うから、愛ってのは盲目ですよね。


 それでね、まぁ、若いっていいですね。そのうちに彼氏さんがA子さんの部屋に遊びに来ることになったんです。A子さん得意の料理を作って待ってたそうなんです。


 でもね、その部屋に入った途端に彼氏さんの方がぶわっって顔を青ざめさせて、

「今日はやっぱり外に食べに行こう」って言って、

 A子さんの手を無理やり引いて外に連れ出したんです。


 あんまりじゃないですか。折角手料理を作って待ってたのに。「外に食べに行こう」ですよ?もちろんA子さんも怒って道中で彼の手を振り払って起こったんです。


 怒って帰ろうとするA子さんを引き留めて、彼氏さんは青ざめたままA子さんに伝えたんです。



「もう一部屋あるはずなのに」



 A子さんの住んでいた部屋ね。1LDKじゃなかったんですよ。


 本当は、2LDK


 もう一部屋あるはずだったのに、なぜか。彼女の部屋には1室しかなかった。

 彼氏は同じアパートに住んでるから気が付けたんですね。


 どういうことかっていうとね。A子さんが住んでた部屋の壁。本来の壁じゃなかったんですって。警察が、壁を調べるとね、壁が外れて、男が出てきたんですって。


 あの不動産屋の男。


 その人ね、壁の中。まぁ、つまりは隠されてたその部屋で暮らしていたんですって。


 偽の壁に隠された部屋で……。


 その人がA子さんの代わりに家賃を半分払ってた。だから、家賃はお安かったんです。もちろんA子さんはそのすぐにその部屋を引っ越して、


 今は、遠方でその時の彼と結婚して幸せに暮らしているそうなので、安心してください。


 でもまぁ、その部屋。というかアパートは、まだその土地にあるそうで、事故物件でもないので、誰かが暮らしているそうですよ。


 以上が、私の聞いたお話でした。

 ご清聴。ありがとうございました。


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