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「………………!」

 少女――アマリアは、悲鳴を上げることもできずに大きく目を見開いた。緑の瞳に映るのは、轟くような咆哮を上げる巨大な熊の魔獣だ。自分の命を奪おうとするそれを、へたりこんだまま為す術もなく見上げている。

 もともと熊は体の大きい動物だが、魔獣化してさらに大型になり、振り上げた手の爪など一本ずつが大型のナイフのようだ。涎を垂らす口元には口に収まりきらないほどに鋭く長く伸びた牙がずらりと並び、月光に白々と光っていた。

 魔の森。魔獣の棲み処である深い森の中に、アマリアは一人きりで打ち捨てられた。――ご丁寧に、手足をきつく縛られたうえで。

 逃げられない。立ち上がることさえできない。後ろ手に縛られた手首から先は感覚すらなくなっている。

 もっとも、手が自由であっても、声を出せていても、アマリアには魔獣に抗う術がない。扱える魔術は治癒の魔術のみ、魔獣には無力だ。教会に所属する聖女として人々を癒すことに注力してきたアマリアは、武術や武器の扱いも知らない。

 濃密な死の気配にも似て、魔獣の獣臭がする。それに混ざって、熟しきった果実が潰れて腐っていくかのような、甘ったるく胸の悪くなる腐敗臭。辺りに漂うこの匂いは、魔獣を呼び寄せるお香の匂いだろう。

(そうまでして、私を始末したいのね…………!)

 おびき寄せられた魔獣が、腕を振り下ろす。

 死を目前にして、走馬灯のように、アマリアの頭の中にこれまでのことが呼び起こされた。

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