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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

宇宙人と殺人鬼

作者: ハープ
掲載日:2026/03/15


 ふたばへ


 今更こうやって手紙を書くなんて、なんだか変な気持ち。でもどうしてもふたばに伝えたいことがあるから、こうして今手紙を書いています。


 私は手紙を書くのって初めてで、どういう風に書いていいのか分からないからとりあえず何もかも最初から書くね。


 初対面の時からふたばは知っている……というか私が打ち明けたことだけど、私は宇宙人です。どこの星から来たかは言ってはいけないことになっているから、仮にアメーバ星とするね。アメーバ星人たちは、私を含めて元々はみんな地球でいうアメーバみたいな姿をしていて、その姿から自由にどんなものにも変身できます。ちなみに地球人でいう性別みたいなものはアメーバ星人にもあって、私は女性だよ。


 私は地球を調査するためにアメーバ星からやってきました。目的は別に侵略とかじゃないから安心してね。その時に地球の生物の姿に変身して調査しようと思って、私は人間の女の子……見た目的には十七歳くらいの女の子の姿になりました。


 本当は犬とか猫とかに変身したほうが、怪しまれずにいられたのかもしれないね。そもそも私は宇宙人だから、学校にも通えないし働くわけにもいかない。地球人としての戸籍とかそういうものもないからね。でも結果的にはこの姿になって良かったと思ってる。そのおかげできっと、ふたばと仲良くなれたと思うから。


 地球人の言葉……私が調査を始めた国、日本の言葉はアメーバ星にいた時に一通り勉強したけど、流石に簡単な言葉しか分からなかったし字を読んだり書いたりはできなかった。でもそれも全部、ふたばが教えてくれたね。本当にありがとう。そのおかげで私はこうやって手紙だって書ける。ふたばの教え方はとても上手だった。


 そうだ、ふたばと初対面だった時のことを少し書いておこうかな。ふたばがどれくらい覚えているか分からないけど、私にとっては大切な思い出だから。


 あれは公園での出来事だった。私はまだ地球の調査を始めたばかりで、人間の女の子の姿から他の姿になった方がいいかも……なんて思っていたところだった。学校にも行かずに昼間からこの姿でフラフラしていると、目立つからね。さっきも書いたように、犬か猫の姿になろうと思っていた。


 考え事をしながら公園のベンチに座っていたら、いつの間にかその正面に女の子がいた。変身している私と同じ、十七歳くらいの女の子。長い髪を二つ縛りにして、片目には眼帯。制服を着て、平日の昼間からフラフラしていた。


「……何してるの?」とその子が聞いてきた。それが私とふたばとの出会い。


「犬か猫、どちらになろうか迷ってるんです」と私は言った。ふたばは少しキョトンとして、それから、

「……名前、何ていうの。私はふたば」となぜか私の名前を聞いた。


 アメーバ星人の名前って地球人からするととても複雑な発音だから、私は本当の名前を教えるか迷って一瞬、空を見上げて考えた。そして、「……そら」と答えた。深く考えずに偽名を名乗ったんだ。


 そしたらふたばは、「……じゃあそらはそらでいいんじゃない」と言った。なんだか哲学的な響きだったけど、多分あの時のふたばはそこまで難しいことは考えていなかったんだよね? 今ならなんとなく分かるよ。


 それは、おそらく犬か猫、どちらになるか迷っている私に対してのどちらにならなくてもいい、という意味の言葉だったんだと思う。別に青空になれと言ったわけではないのは分かる。


「でも、この姿だと調査がなかなか進まないんですよ」

「調査?」

「私はあなたがたの言葉で言うと宇宙人で、地球の調査をしていて……」私はふたばに説明をした。地球人の普通で考えたらこんな話、まず信じないと私が知ったのはだいぶ後で、ふたばは全部信じてくれた。


 それから私たちはよく、公園で会ったよね。ふたばが私に字を教えてくれたり、二人で喋るのは楽しかった。私は最初ふたばに敬語を使っていたけど、それもだんだんほぐれていった。私はふたばに学校は行っているのかとか、なんで眼帯をしているのかとか聞かなかった。正直私はふたばといるだけで楽しくて、知ろうとしなかったんだ。それが良かったのかどうかは、今でも分からない。


 私はふたばのことを好きになっていた。自分で書くのは恥ずかしいけど、恋していた。今も。


 ある日の夜、私はいつもの公園ではなく、路地裏をフラフラしていた。特にふたばとの約束もなかったから。そうしたら、道の奥の方からなんだか変な臭いが漂ってきた。なんだろう? と思って覗いてみると。


 男の子……それもまだ子どもが血を流して倒れていた。どう見ても死んでいる。そしてその隣に、ナイフを持ったふたばがいた。私に気づき、


「……そら?」と驚いた顔をする。そして、「……もしかして、宇宙人には効かない……?」と呟いた。


「ふたば、これ、どういうこと?」私は訳が分からずに問いかける。「ああ……」とふたばは言った。


「私がやったんだよ」と。


「……なんで?」

「なんでって、子どもとかの方が、やりやすいじゃん」

「そういう問題じゃなくて!」私は思わず大声を出してしまう。そして気づく。いくらひと気のない場所だからって、ここまで全然人がいないのはおかしい。


「お星様が、いいって」と夜空を指差して、ふたばは笑った。


 それからふたばが話したことを、ここに書くね。ふたばにとっては一度自分の口で話したことをなんでまたわざわざ手紙に書かれるのかわからないと思うけど、ちゃんと向き合ってほしいから。


 ふたばは物心ついた時から、人を殺してみたいと思っていた。なぜなのかは分からないけれど、ずっと。でもこの国には法律がある。人を殺したら捕まり、それ相応の報いを受ける。ふたばは自分が日本の警察を欺けないことは分かっていた。だからそれを実行に移すことはなかった。


 十歳の、時までは。


 ある日の夜、ふたばがなんとなく夜空を見ていると、流れ星が流れてきた。ふたばはお願いをした。


「人を殺しても、ばれませんように」


 その日のうちに、ふたばは自分の妹を殺した。それがばれることはなかった。妹は、どういう理屈かふたばには分からないが、行方不明として処理された。


 それからふたばは人を殺し続けた。子ども、女性、高齢者など弱い立場の人を狙って。ふたばはその人たちに特に恨みはなかったが、殺すのを躊躇う理由もなかった。何人目かを殺す過程で相手に抵抗され、片目を失った。それでもふたばは止まらなかった。


 そうして、ずっと、人を殺し続けている。


 ずいぶん長い手紙になってしまったね。でももうすぐ終わるよ。


 私はふたばからその話を聞いて、すぐにアメーバ星に帰った。「流れ星」の不思議な力が私には効かなかったことが引っかかった。


 結論からいうと、「流れ星」の正体はとあるアメーバ星人の変身した姿だったんだ。彼はアメーバ星で色々と悪事を働いて、星を追放されていた。ふたばのような理由なく人を殺したい人は他の星にも時々いて、それを「手助け」していたみたい。


 私は彼の情報を、アメーバ星にある地球でいう警察のような組織に渡したよ。今頃彼は捕まって、今度は星を追放されるのでは済まないと思う。


 もうふたばは、ばれないように人を殺すことはできない。それどころか、今までふたばが命を奪ってきた人たちも見つかって、ふたばは捕まる。この国の法律を考えると、極刑は避けられない。


 私はふたばが好きだよ。大好き。だからこれが、私がふたばに何かできる最後のことなんだと思う。


 ふたば。私に字を、言葉をたくさん教えてくれてありがとう。本当に、本当にありがとう。


 まとまりがなくなってしまったかもしれないけど、これでこの手紙を終わります。きっとこの手紙、ふたばには届かないんだろうな。


 そらより


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