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第5話 : 本当は怖い陽春拳







 あらすじ

 なんていうか、ミシェルさん殺しに来た人の使うアーツが、ずっと前に死んだ姉弟子のだったんすよ。




「……話す義理は無い。たとえ最初のアーツマスターの直弟子の頼みでも」



「話す義理はあんだろ、どう見てもそっちはフィフス姉の弟子なんだからよ。


 ほぼ同門だぞコラ!

 同門師匠に敬意を払えってーの!」



 目の前の人間ちゃんは覆面フードで黒ずくめである。

 かろうじて声の高さと服の下の膨らみで女の子なのは分かる。


 ……女の子?

 むむ……エルフの感覚と、アーツの授業で得た感覚がなんか違和感を。



「話す義理は無いと言った」


「あるに決まってんだろって言ってんだろ、2回目だぞオイ!


 フィフス姉が私に危害を加えることなんてない!

 間違ってお菓子取った時以外はね!


 そして、あんたが200歳でもない限りはそのアーツは使えないはずだ!!」



「三度と同じ言葉を言うつもりはない!!!」


 踏み込みと手刀、死角から蹴り。

 動かずに手刀を払って蹴りには蹴りで返す。

 で?やっぱり。

 倒れる瞬間手を伸ばす相手、人差し指と中指以外で腕を掴み、蛇の毒牙の腕への引っ掻き。


 なんで、二つの指を掴んで、引き寄せて膝蹴りだ。


「ガッ!」


 ちょっと浅かったな。膝蹴り二発目!


「チッ!!」


 指掴んでる方にあのおっそろしいカミソリ手刀叩き込んでくる。

 なので、あえて当てられる腕を先に動かして肘を当てて迎撃!


 体制を崩した。

 じゃ、せっかく掴んでくれてる手をこっちが逆に掴んで捻る。


「なっ!?」


 仰向けのその覆面の頭を片膝で膝枕。

 そして───顔面に拳を振り下ろす。


「ッ!?!!?」


 何度も、何度も、痛みで反撃できないように。


「ッ、アッ!!!!!」


 と思ったら、覆面の下血でビチャビチャだろうに、片手で腕を塞いで、あの手刀。

 ま、じゃあ手首掴んで、そのまま肘と膝で挟み込む打撃。


「舐めるなっ!!」


 おっと、すり抜けたか。

 距離を離してまた向かい合う。


「フーッ……!!」


「……喰らうとキツいでしょ、ミシェルさんのアーツは?

 なんせ、私がガキの頃でも大人相手にしても良いようにって、お父さんとフィフス姉と一緒に考えた動きだ」


「……」


「だからさ、大人が使うと、途端に情け容赦のないアーツになるわけだ。

 派手な技があるわけじゃないし、一撃必殺できる訳じゃない。

 淡々と技をぶち込んでいく間に相手が壊れるアーツ。


 それが、陽春拳(ミシェルアーツ)

 過保護な家族が編み出した、やりすぎ護身術」


「……」





「オイ、ところでミシェル師匠。

 お主、俺との試合で本気では無かったな?」


 ふと、なんか周りの襲撃してきた人らもドン引きした様子か、あるいは気絶してる中心でイグニスお爺さんが言う訳だ。


「何言ってんのさ、試合の範囲にしてくれたのはイグニスおじいさんじゃないか。

 本気だったよ、試合の範囲で。


 今やってるのは、生殺の範囲」


 さて、とダンマリちゃんに向き直る。




「で?もう血は止まった不死身ちゃん?」


「!」


 覆面越しにも驚いた顔が見える見える。


「エルフだからってのもあるけど、そういうの分かるもんでね。

 ってオイオイ、フィフス姉から教わったはずでしょそう言う感覚の鍛錬も。

 何も手技だけじゃないでしょ毒蛇手(ヴァイパーアーツ)

 アレンジばっかでそう言う基礎を忘れた?」


「……ッ!」


 瞬間、足を天高く上げるようなキックをしてくる相手。

 なんと、それが斬撃になって飛んできた。


「大道芸ばっか得意になってさ!」


 まぁ避けて戻って、一歩踏み出して距離を詰めてたけどね。


「死ね!!」


 当然振り上げた足を振り下ろすわけで。

 多分あの斬撃入りだけど、そう言う技は足先から出るから、内側は無防備なんだよ。


 太ももを掴んで、体制を崩して、地面に叩きつける。


「ガッ!?」


「口が悪いぞ、フィフス姉に代わってお仕置きだ」


 もう片脚は片膝で踏みつけて、さて逃げられないマウントポジション。


 シンプルに連続で殴る。

 弓を引いて撃つ動作のように、左右の腕を回しながら殴る。

 肋骨を、内臓を、折って、打って、とにかくそこら辺の痛いところ殴りまくって悶絶させる。


「ッ!」


 身を屈めて手を前に出して防御?

 じゃ、ガラ空きの頭また殴るね。なんども


「〜ッ!」


 はい頭防御した。じゃあ次腹。

 両手で両方守る?守りきれないよね?


「─────陽春拳(ミシェルアーツ)に容赦はないんだよ」


 鎖骨を、肘で折る。


「ガッ!?」


 痛みで体を捻った瞬間、空いたもう片方の鎖骨も拳を振り下ろして折る。


「ぎゃあッ!!」


 念入りに、粉砕しておく。


「もう一度言ってあげる。

 陽春拳(ミシェルアーツ)に容赦はない。

 派手な技がない分無駄なく人を砕く。

 女で子供でエルフだったような私が、身を守れるためのアーツ。


 一番確実に身を守る手段は、相手をこうやって壊して反撃できないようにするんだよ」



「……!!」


 覆面越しにも、睨んでるのが分かるね。


「あと言っとくけど、難しいでしょ、再生?」


「…………」


「図星でしょ。

 知ってる?腕切られたり腹に穴空いたりした方が、傷が勝手に治るタイプの不死身には治しやすいんだ。


 けどね、今はどう?

 全身複雑骨折、細かいヒビがいっぱい骨に広がってる。

 鎖骨も真面目に粉にするつもりでやった。


 どんな再生持ちでも、コレじゃあ治るまで時間かかるよ、ねっ!!!」



 容赦ないけど、もう一回肋骨を折っておく。


「あ─────ッ!?!!」


「口はきけるでしょ?

 話なよ、じゃないと、


 こっちはまだ生涯使う気が無かったえげつない技いくつもあんだよ」


 もう一回容赦ないけど、立ち上がって片足を踏みつけで折っておく。


「〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」


「治るからって、死なないからって、

 後悔しないって事ないからな?」


 治るから、もう一回踏みつけておく。

 イグニスお爺さんの『地ならし』ほど強い踏み込みじゃないけど、骨は折れる。



「…………勝負の範囲で俺は助かったな」


「あたり前だイグニス・クラウド。

 あの人は、わざと自らのアーツを広めないのだ。

 その危険性を誰よりも知っているからな」



 ……味方の男にも、周りの敵にもドン引きされてるんですけどー。


 だから教えたくないんだよ、この私のアーツ。


「…………忌々しい、技だ……!」


「んなこた誰よりも知ってんの!

 200年ずっとコレと向き合ってたんだよ!!」


 また立ち上がりそうなのを、骨を折って辞めさせる。


「アンタが言うべきことは2つ!!


 まずなんで毒蛇手(ヴァイパーアーツ)を習えたのか!?

 なんで私の命狙ったのか!?


 言わないと、全身の関節の数が4倍に増えるぞ!

 もちろん、今の数からね!」


 まずは2倍になる蹴り!!

 さて、こんな悪党のやり方をいつまで続けさせる気!?



「…………ただの、打撃ではない……!

 硬魔功(こうまこう)……!打撃の瞬間に防御魔法を纏っている……!!」


「そんなもん基本技術でしょ、話すネタでもない」


「…………ククク…………あははは……

 それも……ぐ、そうだ……語るまでもない……常識……!!」


「……何笑ってんだよ?」


「ククク……時間……稼ぎだ……!」


 !


 驚いた瞬間、今まで大人しくしていた周りの敵っぽい人達が手を広げてイグニスお爺さんとマックス君へ突撃してくる。



 ────辺な魔法発動してる感じしながら。




「二人ともそいつら弾き飛ばして!!」



「「!」」



 二人が、流石の槍捌きで最初の一団を吹き飛ばした。




 で、その人達が一瞬赤くなって、大爆発を起こした。


「ぬぉぉ!?」


「なんだとぉ!?!」


 咄嗟にしゃがんだ二人は無事……かろうじて。


「この、どさくさに紛れて逃げる気か!?」


「バカめ。逃げられるならとっくにしている。



 私もお前も、そこの二人もここで死ぬ」




 ───は?覚悟ガンギマリか??



 気がつけば、人間爆弾になった方々が、周りで爆発しそうな真っ赤に燃えて魔法陣たぎらせている!?



「アンタら、頭おかしいんじゃ無いの!?!」


「すべては、大いなる目的のため」


「あー、一個理解した。

 お前ら、間違いなく『暗殺教団』出身のフィフス姉の弟子だわ!

 まったく、あの姉弟子め!!」


「すまんな!こりゃ俺でも無理だ!!」


「どう逃げますかミシェル師匠!!?」


 こりゃ、槍で無双できる二人でもダメだわ!!


「誰か助けてっつったら来てくれる!?」


 ってなるよね。来ないけど




 ───って思ってたら、外周にいた一人の人間爆弾さんの魔法陣が砕けた。


「!?」


 影が見えない素早さで、次々と魔法陣が砕けて倒れる人間達によって軌跡が現れる。



「誰か、助けてと言いましたようで」



 やって来るは、線の細いイケメンさん。

 そして今のは『飛燕拳(スワローアーツ)』の擒拿術、点穴突き!!



「ユエンさん!?」



 やだ、カッコいいタイミングでカッコよく技を出してきて超イケメン!!歳下で妻子持ちなのに惚れそ、




「ゴホッ!!

 ゲホ、ゲホゲホ!!!」


 と思ったら、すごい咳き込み。



「すびません、ゲホ!!

 実は私が、ゲホ、助けて欲しくて……ゲホ!!

 み、水を……!!」



 ───やばい、そういえばこの人喘息で!!



「お茶ァァァァァ!!!!」


 さて始まりました。

 爆発する人間達から助かるために、この状況から私たちを助けられる人を助ける為に、全力でお茶を運ぶ時間が。



          ***

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