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第4話 : いい再会と嫌な再会





「はい、いらっしゃーい♪

 ミシェルさんのティーハウス、一応開店中だよー♪」


「いらっしゃい。注文はなんだ?」


 ちょっと無愛想な店員いるけど気にしないでー。


「はいこれ持ってく!その後席案内!!」


「わかった」


 まぁ、これでも冒険者さん相手には繁盛しててさー。


 正直、皿4つぐらい左右の手と頭に乗せられるレベルの達人がいて助かるわー。


「なんだか客が多いな!?」


「なんだか今日は多い日だな!!

 老体でもバイト君いて助かるわ!!」


 いやぁ、飛ぶようにアイスティーも普通のあったかい紅茶も売れるし、作ってる菓子も売れる売れる!!

 甘いものそんな欲しいかい!?

 お代もお代で釣り銭ミスりそうな勢いだし、物々交換になったり、ナイフ置いてかれたり大変!!なんで武器ぃ?!


「あ、ミシェルさんごめん!!茶と菓子なんでもいいから6人分!!」


「毎度!忙しいね冒険者さん!?」


「聞いてくれよ!ユグドラシルダンジョンの上の階層にドラゴン出たって!!」


「5年ぶりか、スパン短いな!!

 じゃあみんなドラゴン討伐目当て?頑張れよ!」


 ドラゴンが出たのか!

 ドラゴンといえば、皮も肉も骨も血も何もかも捨てるとこ無い上に、ほっとくとダンジョン出てきて街焼くからなぁ、そりゃ慌ただしくなるね。


「いつの世も竜殺しは皆がやりたがるもんか」



 ちょっと休憩なう。



「イグニスお爺さんは興味あるそう言うの?」


「無知な獣を殺すのは気が引けてな」


「まぁ、大抵は出るの飛竜とかのあんまり知恵はない奴らだしね。

 そういや、翼と別に手足ある古竜って最近見てないな」


「アイツらは賢いからなぁ」


「会ったことあるの?」


「監獄にいたと言ったろう?

 俺ぐらいバカやった奴がぶち込まれる場所は酷いもんでな。

 ……今も住んでる生きた古竜の、穴倉よ」


「よく生きてたね、爺ちゃん」


 今日のお題を数えながら、思わず呟いたわけで。

 稼いだねぇ、お金も、ナイフに斧にボルトにたっぷり……


「ところでおじいちゃんや」


「なんだ?」


「今日、ナイフ払い何人ぐらいいた?」


「……てっきり、俺の客かと思ったが、このぐらいわな」


 さすがと言うか、イグニス爺ちゃん大量のナイフを見せてきた。


「カップ代デカいのにこれじゃあなぁ」


「『返金』も何人かしたがな」


「…………妙な客が多い日だ────」






「貴様は!?

 イグニス・クラウドか!?!」




 と、突然すっごい声!

 声の方向見たら、……あのオオカミ顔は知り合いだわ。


「あれ、マックス君じゃん!

 でっかくなったね!20年ぶり?」


「───ミシェル師匠!そいつから離れろ!!」


 マックス・ティーチ君は、オオカミ系の獣人の子。

 まだ確か60……人間換算だと20か24ぐらいになったばかりだっけか。


 は、置いておいて、礼儀正しいあの子がいきなり槍を蹴って飛ばしてくるとは。


 アレは『牙突拳(ランスフィストアーツ)』の武器術。

 と言うより、本来は槍を扱う武器術がメインのアーツなんだけど、その動きを素手にも落とし込めるって言うのが正しい。


 そんで持って、元々獣人に伝わる槍の攻撃方法を体系化した必殺の一撃があの槍蹴り。



 イグニスお爺さん死んだかも?



「そうか、マクシム・ティーチの息子か。

 大きくなったもんだ」


 杞憂だったと言うか、まさかのあの威力の槍を軽く弾いて逸らすとは。

 いや、実はすごい速さで放たれてるものほど、横からの力に弱いけど、まぁそれでもすごい。


「貴様!!この50年間陰に潜み、とうとう出てきたと思えばミシェル師匠の側にいるだと!?!

 ミシェル師匠の弟子を語る暗殺者と関係があるのか!?」


「何それ?どう言うこと?」


「知らんな、マクシムの息子!!

 俺は、偶然こちらのミシェル師匠の世話になっただけのこと!

 しかし、お前もミシェル師匠と知り合いとは、世間も案外狭いものだな!」


「ほざくな!!

 父の仇、ここで!!」


「お前に仇を取らせてやりたいが、あいにくだが俺ではなく後ろの連中が許してはくれないそうだ」


 瞬間、マックス君の後ろから投げナイフが!


「何奴!!」


 掴んで、即座に投げ返す。


 なんて思ってる間にこっちも飛んできてるし。

 おいおい、タダでいいの?後で質屋に売ろうっと。


「マクシムの息子!そもそもどう言う状況だ?」


「貴様に説明してやる義理はない!

 だが、教えてやる!数日前、賊が国王陛下を襲撃した!

 そいつらは、陽春拳(ミシェルアーツ)に酷似した技を使った!!」


「は?

 私、自分の拳教えたこと一度もないよ?

 弱い技だし、せいぜいマックス君に槍術の一部をさんの言う程度にしただけじゃん?」


 じゃあ、この大量の投げナイフ私が狙い?

 ……通りで多いわけだわ。


「そいつらと戦って分かったんです、ミシェル師匠あなたの拳ではない!」


「んなことはまぁいいとして、これひょっとして囲まれてない?」



 気がつけば。

 …………みんな普通の冒険者か街の人かな、って思ってたんだけど、なんだろう、殺気がムンムンな人達がずっとこっち見てるんだ大量にね。



「囲まれたか!?」


「近衛隊長でしょ、部下は?」


「俺の足のが速かったので」


「一人かバカタレ!

 こう言う時単独行動する奴は嫌われるぞ?」


「なぜ親の仇にまともな説教されなければならんのだイグニス!!」


「自分のせいでしょ、まったく若いんだから!

 あー、つまり援軍なしで、3対……」


 たっくさん!


 ってしか思えない。



「予想外の戦力だが、これではっきりした。

 ミシェル師匠に生きていられると不都合らしいと言うことが!」


「にしても私に似たアーツねぇ……名前の通り私だけのものなんだけどなぁ……」


 …………一つを除いて、ね。


 おっと、変な考えしているうちに、遠くで魔法使いが魔法の用意し始めたわ。


「隠れる気なくなったから派手にやる気ね」


 じゃ、ダッシュで一回店内へ!


「何を!?」


「武器がある!」


 てなわけで、穴あき我が店のカウンターに駆け込んで……あやっべ片付けてねぇ!!


「来たぞ避けろ!」


「言われずとも!」


 ボン、と音立てて店が爆ぜた。


「ちくしょう!修理代払わないくせに派手に壊して!!」


 なんとか木箱とかどけて……あった!!


「第二が来るぞ!」


「槍を奪えば!!」



「お待たせ!」


 ヒュンと空気を切り裂いて───矢を遠くの魔法使い二人に命中させる。


「久々に使ったけど、当たるもんだね」


 エルフの武器といえば?魔法の杖っていう人多いけど、

 やっぱ、弓と矢でしょ。1000年はエルフ全員使ってる。


「……なぜ矢筒を左腕に?」


「あ、気になるお爺さん?

 これはね……」


 と、遠くで別の魔法使いが魔法を用意してる!

 弓を構えて、腕に付けた矢筒から矢を抜いて構えて引いて離す。

 を、3連射。

 ヒュヒュン、と一気に3人沈める。

 間にもう反対側も4連射ぐらい。


「引くのも狙うのも早いな!?!」


「まぁコレはアーツっていうより、エルフの中でも弓下手な方特有のやり方でさ。

 当たらないかもしれないなら弾幕稼ぎだよ」


 実際結構外してる。

 でも、外れてもいいんだ。

 だって、当たりそうな夜の雨避けてるせいで魔法使いさんが魔法使えないもんね!


「すごいですよミシェル師匠」


「では、俺達も働くか」


 と、イグニスお爺さんが近くのボケっとしてる冒険者なのか暗殺者なのかの相手に一撃を喰らわせて沈めてる。

 そのまま装備をの槍奪って、慌てて動いた人の頭を槍で叩いて気絶……ですむ?


「イグニス!?」


「極大拳はむしろ槍術のが力を発揮する。

 竜殺しの槍術だ、並ぶものとないな」


「…………それを、俺の前で言うか……!?」


 あ、マックス君後ろに槍持って突撃されてる!!


「フン!」


 咄嗟に私も矢で、と思うまもなく後ろ蹴りで相手の槍を吹き飛ばして、そのままジャンプで空中でキャッチしてからの、振り下ろした槍で相手を黙らせる。


「牙突拳は、槍ととものあり!!

 初代アーツマスターの技と、我が祖先の森の獣人達の槍術を組み合わせしアーツ!!


 貴様の竜殺しの槍とも戦える!否!!

 竜殺し程度でようやく並び立つ物!!」


「おぉ、そうだったな。

 こりゃ頼もしい」


 なんて言いながらも来る相手を槍で捌いて、確実に仕留める。

 いいねー二人とも流石達人。おかげでこっちはもうそろそろ矢の在庫が心配な支援ができるね。


「しかしこいつら、一体なんだ!?」


「少しコイツで揉んでから尋ねるのが良いだろう」


「お前に賛同する日が来るとはな!!」


「唐揚げの調理みたいな揉み方されそ……」


 ───殺気?


 後ろって店だよね、なんて油断しなくて正解だったけど、

 トスンって軽い足音に気づいて、振り向いたら手刀が突き込まれてた。


「誰ぇ!??」


 何が恐ろしいって、手刀って「真面目に手を刀にすること」だっけ?ってなるような切れ味で弓が真っ二つに切られちゃったってこと。


 さらにもう片方飛んできた!!


「ッ!」


 その腕にこっちの腕潜らせてそらして、逆にパンチ。

 全く同じ動きで逸らされて、ピント伸ばした指先というナイフを突き入れられる。

 肘で、手で、逸らす、反撃する。


 ───全く同じ動きで技を応酬しあう。



「ミシェル師匠、それは!?」


「マックス君、こりゃやばいわ!!」


 一回蹴り入れて距離を離して、手を前に楊春拳(ミシェルアーツ)基本の構え。


 相手は、似たような構えから、片手の肘を上に曲げて手首も曲げて手刀の指先はこっちへ向ける。



「同じ技!?」



「いやちょっと違う。

 なんせコレ、私の姉弟子のアーツがベースだもん」


 手の角度が違うけど、あの手の形は『蛇』だ。



「さて、聞かせてもらおうか。

 なんで、誰にも教えないまま死んだはずのフィフス姉の『毒蛇手ヴァイパーアーツ』を?」



 何度も、お互いこの構えで組み手したから分かるさ。

 形を変えても原型が、ね。



「…………流石と言うべきか、ミシェル・リュー。

 我が師と同じ、最初のアーツマスターの直弟子なだけはある」




「何?」


「知らなかったのかイグニス・クラウド?

 ミシェル師匠は、最初のアーツマスターの直弟子!


 もはや名前も忘れられた異世界より来た最初のアーツマスター、シャオロン・リューに育てられたお人だぞ!?」



 イグニスお爺さん、そんな驚かないでよ。

 てかマックス君も私の無駄に凝った肩書きを無駄に凝って言うんじゃないの!



「そんなことより、あんたの改造毒蛇手の方が問題だよ!

 そのアーツは200年前のお父さんの死後、

 ほぼ同時期にフィフス姉もバカやって死んだせいで誰にも伝わってないんだから!!」


 墓から蘇ってるなら、もうとっくにアンデッドの身体で会いに来てるはずだもんフィフス姉なら。


 フィフス姉のアーツが墓場から蘇ることなんてないはずだもん。



「喋んないなら、身体に聞くことになるけど!?」



 久々に見せるぞ?私は中々使わない陽春拳!



          ***

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