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転生したら猛毒ハーレム♡  作者: たんすい
第5章:王女の覚醒とパーティの初陣
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第60話:光の中のシルフィ

ショウコから報告を受けた俺たちは、すぐに全員でシルフィの部屋へと集まった。これまでの経緯を説明すると、彼女は静かに、しかし全てを受け入れるように頷いた。


「わたくしには、過去の記憶はございません。ですが、皆様がわたくしを救ってくださったことは、十分伝わりました。本当にありがとう」


そう言って、シルフィは深々と頭を下げた。その姿は、王女の威厳ではなく、一人の女性としての誠実さに満ちていた。


「顔を上げてください、シルフィ。あなたはもう、俺たちの大切な仲間だ。俺のことも…そうだなカイと呼んでくれ」


俺がそう言うと、彼女の顔がぱっと輝いた。


「はい、わかりましたわ『カイ』」


ファカが、面白そうにシルフィの顔を覗き込む。


「では、わたくしのことも『ファカ』と。敬語もいりませんわよ?」

「はい、ファカ。これから、よろしくお願いいたします」


ムーは「わぁ…!」と嬉しそうに声を上げ、サリヴァは少し照れくさそうに「…おう」と短く返す。ベニーはフードの奥でこくりと頷いた。


こうして、エルフの姫シルフィーナは、俺たちの新しい仲間「シルフィ」として、この屋敷に本当の意味で迎え入れられた。


俺は、穏やかな表情で仲間たちと打ち解けていくシルフィの姿を見ながら、心に誓う。アンブロシアの真意が何であれ、この選択を後悔させるような未来には、絶対にさせない。シルフィが、この場所で幸せに生きていけるように、俺が必ず守り抜いてみせる、と。


だが同時に、俺の心の奥底では、神と、そしてアンブロシアに対する、静かで冷たい怒りの炎が、今も消えることなく燻り続けていた。



その日を境に、シルフィは変わった。

もう、誰の手も借りようとはしなかった。


それは、俺たちを信用していないからではない。

自らの足で立つ――その決意が、彼女の瞳に新たな光を灯したのだ。


リハビリでは何度も転び、膝を擦りむいても、涙をぐっと飲み込んで立ち上がった。夜中、人気のない中庭で、月明かりだけを頼りに黙々と弓を引く姿もあった。弓返りでできた痛々しい痣が腕を覆っても、彼女が弓を手放すことはなかった。


その音を、廊下を通りかかった仲間たちは聞いていた。

そして皆、何も言わずに、その背中を静かに見守っていた。


それから数週間後――。

シルフィは、野山を風のように駆けるようになっていた。


草を踏む軽やかな音が響き、森の木漏れ日が翠玉色の髪をきらめかせる。

倒木を軽々と飛び越え、岩肌を蹴って駆け抜ける姿は、もはやかつての面影すらない。


森の奥で振り返ったシルフィが、軽く息を整えながら微笑む。

「遅いですわよ、カイ」


そう言って駆け寄ってきた瞬間、俺は足元の石に躓きかけた。傾いた身体を、華奢な腕が力強く支える。


額が触れそうなほどの距離で、澄んだ瞳がこちらを覗き込んだ。


「大丈夫ですか?」

「あ、ああ……」


ただそれだけを返すのがやっとだった。


胸の奥が、不自然なほど速く脈打っていることに、彼女は気づいていない。


美貌。気品。そして、滲み出るような威厳。

誰にでも分け隔てなく接する優しさも、研ぎ澄まされた矢のような強さも、すべてが眩しかった。


まるで手の届かない場所に咲く花のようで――それでも、目を離すことなどできなかった。


「カイ、ほら、あそこに…」

彼女が指さした先には、一羽の野ウサギがいた。


「ショウコへのお土産に良いかもしれませんね。さあ、カイ、弓を」

シルフィが、俺の腰にそっと手を回し、背後から腕を取る。


「弓はこう…。もっと肘を張って」


指先が触れるたび、背中越しに伝わる柔らかな体温に、心臓が跳ねた。

彼女はきっと気づいていない。俺が、まともに息もできていないことになど。


「――今です!」


彼女の合図で放った矢は、吸い込まれるように一直線に飛び、獲物を正確に射抜いた。


「すごい! やりましたね、カイ」


風が吹き、金色の葉が舞う中、一枚がシルフィの髪にふわりと乗る。

思わず手を伸ばすと、彼女もそれに気づいて指を伸ばし――指先が、そっと重なった。


「……あ」


触れ合った指先に、シルフィが小さく息を呑む。

そして次の瞬間、彼女は微笑んだ。


まるで、固く閉ざされていた蕾が一気に花開くように。

曇り空を突き抜けて、太陽の光が降り注ぐように。


三百年の絶望も、おぞましい傷跡の記憶も、その一瞬だけは完全に消え去って。

ただ、一人の無邪気な少女がそこにいるかのような、屈託のない、笑み。


時が、止まった。

森のざわめきも、風の音も遠のいて、世界にはその笑顔だけが存在していた。

俺は、息をすることさえ忘れて、その光景にただ見惚れていた。

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